天体望遠鏡直視（倒立像）

天頂ミラー使用時（鏡像）

・露の入江の入口には，リュンカー山という地形があります。これは他に見られる山脈や山塊とは違って，複数のドーム（溶岩が噴き出して盛り上がった地形）の集合体でできていて，実に直径が70kmもあります。非常になだらかなため太陽光線が低く当たる明暗境界線付近でなければ目立たない地形です。

天体望遠鏡直視（倒立像）

天頂ミラー使用時（鏡像）

・嵐の大洋の西側にあたる領域です。グリマルディ（直径225km），ヘべリウス（106km），リッチョーリ（146km）の大型クレーターが集まっています。
・へべリウスはクレーターというよりも小さな海というべき地形です。内部がしっかり溶岩で満たされ，暗く見えています。
・カバレリウス（58km）の北東，ライナー（30km）の西にはライナーγと呼ばれる不思議な模様があります。（私にはマンガでお化けの近くに描かれる人魂のように見えるのですが…）。暗い海の中で白く明るく意外によくわかります。ここにはデコボコがなく平坦で，一説によると彗星がぶつかった跡ではないかと言われていますが，その成因についてはよくわかっていません。ただ，模様のところに強い磁気（月面で最も強い）があるということは判明しています。月面上のミステリーですね。
・グリマルディの東にあるダモアゾー（37km）は，その周辺も含めて独特な姿をしています。どうやってこんな形ができたのでしょう？

天体望遠鏡直視（倒立像）

天頂ミラー使用時（鏡像）

・シルサリス（直径42km）の東あたりからダーウィン（130km）の東あたりまで，小望遠鏡でもよくわかるシルサリス谷（長さ426km）があります。シルサリスの名前はクレーターよりもむしろ谷の方が有名です。月面最長のこの有名な谷は満月前の方が条件良く見られます。
・ビュルギウス（87km）の周壁にあるビュルギウスＡは小さいながらとても新しいクレーターで，満月時など太陽光が上から当たるときには，とても明るく輝き周辺の光条も目立ちます。写真を撮るときはここが露出オーバーにならないように気をつけないといけないほどです。
・東の海はその中心が月の西端からさらに５度裏側にあります。秤動でこちら側へ大きく傾いた時にようやく写真のように見えてきます。東の海は比較的新しい海（およそ38億年前に誕生）で，きれいな３重リング構造をしていることが探査機からの写真でわかっています。残念ながら地球から見る限りその様子を想像することが難しいです。

天体望遠鏡直視（倒立像）

天頂ミラー使用時（鏡像）

・バイイ（直径約300km）は月面の表側で最大のクレーターです。とても古いため周壁はかなり崩壊しています。月面南西部のかなり端っこにあるので秤動の具合によって見え方がずいぶん変わります。
・シッカルト（227km）もかなり大きな横綱級のクレーターです。最大の特徴は内部のまだら模様にあります。全体ではなく一部だけ溶岩が湧いて固まったのですね。(この写真では影になっていてまだら模様がよくわかりません)
・シッカルトの南のワーゲンチン（84km）は不思議な形状をしています。通常のクレーターなら内部が凹んでいますが，ワーゲンチンは逆に内部が周辺よりも高くなっているように見えます（よく見ると南東の周壁は少し高いことがわかりますが）。これは内部を溶岩が周壁ギリギリまで埋めて固まり，その後に他からの放出物に薄く覆われて（内部が暗く見えずに）形成されたと考えられます。それにしてもクレーターが凹んでいるという先入観でみるとアレッと思う変わり種のクレーターです。