肉眼では1つにしか見えない星でも望遠鏡などで見ると2つの星が接近して見えることがあります。これを二重星と呼んでいます。夜空には非常にたくさん二重星があり,そのほとんどが重力で結びつき互いに回りあっている連星であることがわかっています。
おおぐま座 ミザール アルコル
北斗七星の柄の折れ曲がった部分の星がミザール(ζ星)です。その傍らに寄り添って見えるのがアルコル(80番星)です。ミザール(2等星)とアルコル(4等星)は肉眼でも確認できるいわゆる肉眼二重星ですが,ミザールは望遠鏡で見ると分かれて見える望遠鏡二重星(2等星と4等星)です。どれも白で色的には面白みはないですが,ミザールは望遠鏡で初めて発見された記念すべき望遠鏡二重星です。
りょうけん座α星 コルカロリ
北斗七星の近くにあるりょうけん座の二重星です。2.9等星(白)と5.6等星(うす紫)のペアで美しい二重星と言われています。しかし,個人的にはそれほど美しいとは感じません。(アレッ?!)みなさんの目で美しく見えるかお試しあれ!
しし座γ星 アルギエバ
2.6等星(橙)と3.8等星(黄)の二重星。接近しているので倍率を上げて見るほうが良いでしょう。
うしかい座ε星 プリケリマ
プリケリマとは「最も美しいもの」の意。2.5等星(黄)と4.9等星(青)のかなり接近した二重星。小さな望遠鏡ではなかなかきれいに分解して見えない難しい対象です。ロシアの天文学者がプリケリマと名付けましたが,美しく見えるかは望遠鏡の性能と当日の空気の落ち着き具合によると思います。個人的にはそんなに美しいとは思いませんでしたが(笑)。
はくちょう座β星 アルビレオ
3.0等星(橙)と5.1等星(青)の有名な二重星。小型望遠鏡の低倍率でもきれいに分かれて見えて色の対比も美しいです。(天上の宝石とも称される) 最近,位置天文衛星ガイアの観測データから連星ではなく,重力的な結びつきの無い「見かけの二重星」であると結論付けられました。
こと座ε星 ダブルダブルスター
肉眼で見て1つ。双眼鏡で見て2つ。望遠鏡で見ると2つの星がそれぞれ2つずつに分かれて見えるので「ダブルダブルスター」といいます。5等星3つと6等星1つからなる暗めの星ですが,1等星ベガの近くにあるので見つけるのはらくちんです。できるだけ優秀な望遠鏡で倍率150倍程度で見てください。
ヘルクレス座 ラスアルゲティ
3等星(赤)と5等星(うす青?)の2重星。主星はかなり星としては赤く見えます。真っ赤というよりは橙色の濃い感じでしょうか。伴星(暗い方)はスペクトル型から判断すると黄色かなと思うのですが,明るい赤が近くになる関係か,うす青っぽく見えたり緑っぽく見えたりすることがあります。比較的接近しているので倍率は100倍以上で見ましょう。
いるか座γ星
4等星(黄)と5等星(青)の二重星。個人的には金と銀の星が並んだように見えてとても気に入っています。小型望遠鏡でもきれいに分かれて見えるのでおすすめです。
おおいぬ座145番星
5等星(橙)と7等星(青)の二重星。冬のアルビレオともいわれる色の対比が美しいペアです。少し暗い星だけに見つけるのが難しいですが,小型望遠鏡でもきれいに離れて見えます。
こぐま座α星 北極星
有名な北極星も二重星です。主星が2等星で伴星が9等星と明るさの差がかなり大きいので,倍率を上げ気味にしてしっかりピントを合わせることが必要です。一度チャレンジしてみてください。
シリウスとリゲル
一等星のなかでも明るいシリウスとリゲルはいずれも二重星です。離角はどちらも10秒前後とあまり変わらないのですが,シリウスは主星Aと伴星B(白色矮星)の明るさの違いが約10等級(10000倍)もあるので,主星の強烈な光に幻惑されて伴星を認めるのが極めて困難です。口径25cmの反射望遠鏡で写真に何とか撮れましたが,眼視では判別できませんでした。リゲルは口径10cm以上の良質な望遠鏡では比較的楽に見分けることができます。