冬になると夜空に目立つオリオン座。知らない人がいないくらい有名な星座で、実際に見た方も多いでしょう。そのオリオン座が夜空でおうし座とにらみあっているのをご存知でしょうか?描かれた星座絵がそんなスタイルになっていて、もう2000年以上前からにらみあっております。
今回はオリオンVSおうしと題して、両者の対決を神話や周りの星座をからめて解説していきたいと思います。
まずは両者の星座の形を確認しておきましょう。
オリオン座は赤っぽい1等星ベテルギウスと青白っぽい1等星リゲルと2つの2等星でできる長四角とその真ん中に整然と並ぶ3つの2等星(通称オリオンの三ツ星)が見事なバランスをみせています。長四角の上の2つの星がオリオンの肩、下の2つの星が足。三ツ星が腰の帯というぐあい。周りの星をつなぐとライオンの毛皮をかけて棍棒を振り上げるオリオンの勇姿が完成します。ただ、長四角と三つ星以外は暗い星をつながないといけないので、満天の星でも苦労します。
一方、おうし座は1等星アルデバランから並ぶV字形の星並び(ヒアデス星団)が顔、V字を伸ばした先にはそれぞれ星があって、それらが角の先を表します。背中にはすばるが目立ってまるでコブのようです。暗い星をつないで前足もなんとかわかり、イカツイおうしのできあがりとなります。赤っぽいアルデバランはおうしの目にあたり(別名ブルズアイ)、興奮してオリオンをにらみつけているようですね。オリオン座には負けますが、星座の形、明るさ、わかりやすさなど魅力は十分です。ぜひオリオン座と共に夜空で確認してください。
さあ,にらみあうオリオンとおうしのイメージができたところで質問です。オリオンは狩の名人、それに対して見た通りメチャメチャ大きくて怖そうな牛、もし両者が戦ったとしたら、どちらが勝つでしょう?
これプラネタリウムで子どもたちに尋ねると、十中八九「オリオン!」と叫んでくれます。やっぱりオリオンは人気ですね。でも勝負は…牛の勝ちなんです。(え〜)
絶対オリオンには負けないんです!
(なんでやねん!)
なぜかというとこの牛が牛ではないからなんです。(どないやねん!)
ホントはこの牛、神さまなんですよぉ!
(ほんまかいな〜)
という感じでツッコミ3連発。これをワタシはプラネタリウムで20年以上続けてまいりました。
m(_ _)m
ようするに神さまだからオリオンには負けないってことですね。じゃあ何で神さまが牛に化たんでしょう?
別にオリオンと戦うために化けたんじゃありません。元々フェニキアの王女エウロパにひとめほぼれをしたギリシャ最高の神ゼウスが、彼女をさらうために美しい白い牛に変身した姿なんです(絵画参照)。あまりにきれいで優しそうな牛だったので、心を許したエウロパがしゃがんだ牛の背中に座りました。そうすると牛は静かに立ち上がり、そのまま走って連れ去ったのです(こら〜)。なんぼ神さまでもこんなことしたらあきませんよね。ゼウスは牛のまま海をわたりエウロパをクレタ島まで運んで身を明かしました。ワシはゼウスじゃ、お前はここでワシの子を産むのじゃ〜って、無茶苦茶ですな。
というわけで、おうし座の牛は神話によると白くて優しそうな牛なんですが、あまりニタニタしていると目の前のオリオンに棍棒でしばかれそうなので、そうさせないように怖い顔でにらんでるんですね、きっと。
オリオンは凄腕の狩人ではありますが、この牛がただモノではないと感じているはず。しっかり構えて警戒しているようですが,ひょっとしたらビビッているのかもしれません。しかし,オリオンには心強い味方がいるのでした。狩りのお供をする二匹の犬、おおいぬ座とこいぬ座です。
こいぬは上のふたご座に向かって吠えています。ふたごがオリオンの棍棒を蹴って邪魔しているので怒っているんでしょうか。ちっちゃいのに頑張ってますね。でも,ふたごがオリオンの邪魔をしているのには理由があります。実は、この牛に化けたゼウスがふたごのお父ちゃんだからなんです(ほんまかいな~)。ふたごにしてみたら「うちのお父ちゃんになにすんねん!」ということでオリオンの棍棒を蹴っているわけですね。
一方,おおいぬは何をしているんでしょうか?どう見てもお座り&お手をしているポーズです。これはオリオンが踏んづけているうさぎ(うさぎ座)を目の前にして食べたいんだけど、オリオンに待てぃ!今はそれどころやないんじゃ!と言われて…このポーズなんですね。だぶん。苦しそうな表情は我慢の限界なのかもしれません。よだれたらして前足がうさぎの方へ伸びてます。こいぬは頑張ってますけど、おおいぬはあまりオリオンの役にたってないどころか足を引っ張ってますね。
さて、オリオンは牛だけにビビっているわけではありません。牛の角の上に変なものを見てしまいました。それはヤギを抱いた怪しいおっちゃんです。ぎょしゃ座というんですが、1等星カペラを持っているわりにあまり知られていません。見るとこのおっちゃん、牛の角の上に座ってます。普通こんなところに座ります?いったい何しとんねん?!しかも足の裏に角が刺さってますよ。大丈夫かな?
オリオンからしてみたら、スゴイ迫力の牛の角の上にヤギを抱いた変なおっちゃんが座っているわけで、頭が混乱状態!意味不明でコワ~い。これはもうオリオンさんのメンタルにかなりのダメージが…。
しかもそれだけではありません!このおっちゃんの頭の上には…アンビリーバボー!キリン(きりん座)が乗っています。しかも片脚立ち!(え~)これは中国雑技団も真っ青!オリオンも気を失います。
(牛の角におっちゃんが座りその頭の上にキリンが乗る?!誰やこんな星座にしたんわ。おもろすぎるヤロ~)
どうですか,これでオリオンがおうしに勝てない理由がわかっていただけたでしょうか。
オリオンがちょっとかわいそうな気もしてきました。
ところがさらにオリオンに不幸が襲います。
おおいぬとこいぬの間,ひきょうにも背後から一角獣(いっかくじゅう座)がバーン!!なんと!オリオンの腕に長く鋭い角が刺さってます。もはやおうしとは戦えない~。2000年前にはいなかったけど,400年くらい前に突然現れてオリオンを攻撃したんですよ。えげつないですね。一角獣は想像上の動物ですがお話によると,清純な乙女は大好きで膝の上で甘えるけれど,おっさんを見ると獰猛になって攻撃をしかけて手が付けられないほど暴れる性質なのだそうです。
何というヤツだ!同じおっさんとしてますますオリオンがかわいそうになってきました。
みなさんはどう思われますか?
以上、長々とおつきあい、ありがとうございました。堂々と冬の夜空で輝くオリオンもおうしに完敗。星座の世界では大変な目にあっているというお話でした。(終)
【注】
神話に語られている要素はところどころ入れていますが、このお話はあくまで個人的にこう見えてしまったということなので、あまり信じ込まないようにお願いします。(;^_^A