やぎ座・うお座物語

星座の起源はメソポタミアにあり!ということはこちらでお話ししました。
今回ご紹介する「やぎ座」と「うお座」の神話は,メソポタミアでの星座の姿がかなり影響していることがわかります。

やぎ座・うお座の原型

 その姿が,これ(画像)です。なんじゃこりゃ?!

 神話を創り出すギリシャの詩人たちもきっとそう思ったに違いありません。
 一応解説しておくと,やぎ座の原型は半分ヤギで半分サカナ,縮めて言えばヤキザカナじゃなくヤギサカナです。これはメソポタミアでの水の神エアのシンボル「スフルマシュ」の姿とされています。うお座の原型はさらにヘンテコですね。片方は人魚,片方はツバメで下半身が魚??この姿が何を表すかは調べた範囲ではよくわかりませんでした。ただ,うお座の人魚とツバメを結ぶ紐は,チグリス川とユーフラテス川が合流することを表しているそうです。
 そんな意味を知ってか知らずかわかりませんが,ギリシャの詩人もたぶん面食らったことでしょう。

そこで出来あがったこれらの星座神話が以下のようなものです。

パーン(左)とダフニス(右)

 ある時,ナイル川(あるいはユーフラテス川)のほとりで神々の宴会が催されていました。酒を酌み交わし,楽器を奏で,歌ったり踊ったりで大いに盛り上がってきたころ,恐ろしい怪物テュホーンがやってきました。テュホーンはものすごい巨体で肩からは100もの蛇の頭が生え火を吹く怪物で,神々もそう簡単に太刀打ちできません。そこで神様たちはそれぞれ動物に変身し一目散に逃げ去りました。逃げ遅れたのが牧神パーンでした。パーンはヤギの角と脚を持ち葦笛(シュリンクスという)を吹くのが得意な神様です。テュホーンが間近まで迫り,焦ったパーンは目の前にあった川に飛び込みます。テュホーンも川に入ってきたので,早く逃げるために「えいっ!」と魚に変身しました。正確に言うと変身したつもりでした。何とか逃げ延びたパーンでしたが,他の避難した神様の前で思いっきり笑われます。えっ!何で?と我が身を見ると…なんじゃこりゃあ~。上半身がヤギで下半身がサカナのヘンテコな姿。照れるパーンを他の神様は,ワッショイ,ワッショイ担ぎ上げ,大空へポ~ンと放り投げました。こうしてできたのがやぎ座なのです。(どないやねん!)
 一方,同じくテュホーンが来た時に,川に逃げた美の女神アフロディーテとその子どもであるエロスは見事に魚に変身し,広い川で離ればなれにならぬよう紐で尻尾を結んで逃げていきました。そして,その姿がうお座になったということです。

 さあ,あなたはどう思いました?
 これは明らかにメソポタミアから伝わってきたヘンテコな絵の星座を説明するべくギリシャの詩人が創作した神話ですよね。しかし,やぎ座はあまりにも強引なつじつま合わせに感じられます。ほとんどマンガの世界です。逆に考えるとこの時代によくこのようなユーモアを神話に採用したなと私なんかは感心します。どちらにせよ,こんなふざけたというかユーモアたっぷりの星座神話は他にありません。やぎ座生まれの方,複雑なお気持ちでは……心中お察し申し上げます。
 そして,うお座。さすがに人魚とツバメ魚のつじつま合わせは困難だったようで,魚になり尻尾を紐で結びあい逃げたという親子愛として簡単にまとめています。ギリシャ詩人も考えるのに疲れたのではないでしょうかね。「ええいっ!めんどくさい!このへんにしといたろかっ」ってな感じ…。

 最後に星座の星の並びを確認しておきましょう。

 まずはやぎ座です。この星座は暗い星が多いですが,形としては逆三角形です。プラネタリウムで何に似てる?と聞くと「ギョーザ」とか「パンツ」とか叫んでくれます。(いや~ね)。それにしてもこの形が半分ヤギで半分サカナにはどう見ても見えません。サカナの尻尾がぐりぐり曲がっているのは,この形に収めるためなのでしょうか?

 次にうお座です。これも暗い星ばかりで,満天の星でもたどるのが大変なほどです。星をつないでも星座の姿を想像するには,それこそ想像力をたくましくしないといけません。私は魚の姿を想像するのはあきらめました(笑)。星座絵で描かれた魚はたい焼きに似ていますが,いったいどんな魚がモデルになっているのでしょう?ご存じの方がいらっしゃったらお教えください。

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