天文用途にカーボン三脚導入しました!

目次

はじめに

 昨年、自動追尾経緯台AZ-GTi-Xを入手し何度か使っているうちに標準セット三脚の剛性不足が気になりました。それでAZ-GTi-Xに使える軽量で丈夫な三脚がないかと調べ、このカーボン三脚「ARTCISE KS90C」にたどり着きました。今回はこの三脚とその活用について簡単にレビューしたいと思います。

三脚選定の経緯

 ネット上で調べると赤道儀を載せる三脚として評価の高いカーボン三脚があることを知りました。それがINNORELのRT90Cでした。これはジッツオシステマティック三脚5型とほぼ同等の強度と使い勝手の良さを持ち、価格はジッツオの約1/5という中国製の製品です。さすがに本家には劣る部分がありそうですが、カーボンパイプ(日本のTORAY製)の太さは40mm、耐荷重40㎏というスペックで激安なのは魅力ですし、すでに多くの天文屋さんが使っているのは安心できます。三脚のトッププレートはフラットで3/8インチネジが付いており、経緯台AZ-GTi-Xの底面に装着可能。またジッツオ5型用の赤道儀アダプターなる製品が存在していて、これをトッププレートと交換すればさまざまな赤道儀を載せることができるといいます。私の所有しているポータブル赤道儀も適合するアダプターがあったので使用できそうです。

ARTCISE KS90Cの外観、台座には水準器も有

 一方、ビクセンの望遠鏡三脚も考えたのですが、そのままでは経緯台AZ-GTi-Xが載らない(特注アダプタはありそうだが…)し、収納の長さや重量、価格等を考えると私の用途ではINNOREL RT90Cが良さそうだと判断しました。
 ところが、この INNOREL RT90C とほぼ同じ物らしい ?! ARTCISE KS90C という製品があり、Amazonでは前者が34500円、後者が31000円という価格(2024年1月15日現在/いずれも三脚のみ/税込み)でした。
 前者に比べ後者の情報が少なく少し不安でしたが、Amazonのレビューで「天体望遠鏡に使用」「ジッツオ互換」「ストーンバッグ、ソフトケース付き」という文言があったので、それを信じて後者を購入した次第です。

ARTCISE KS90C(三脚のみ)の商品内容

三脚とその付属品

 Amazonの商品説明の写真や文章では付属品が何か明確でなく不安でしたが、写真のようなものが送られてきた箱に入っていました。
 ①三脚本体(3/8ネジトッププレート付き)②収納ケース(クッション入り)③ストーンバッグ(メッシュ)④75mmボウル ⑤石突き3個 ⑥カメラネジ変換アダプタ(1/4→3/8)1個 ⑦六角レンチ3本 ⑧取扱説明書(英語/中国語)

 INNOREL RT90Cの方は商品内容(ストーンバッグはない)が写真でちゃんとわかるようになっているので、ARTCISEさんにも明記しておいてほしいところ。でも欲しいなと思っていたストーンバッグが入っていたので許します(笑)。

付属の収納ケースに納めたところ

 収納ケースは長さに余裕があって、三脚にAZ-GTi用の延長ピラーを付けたままでも入ります。また、ケースの内部にポケットが、外部にもジッパー付きのポケットがそれぞれ1カ所ずつあり、クッションもしっかりしているのでとても実用的です。気に入りました。

経緯台AZ-GTi-Xに接続

 先に述べたように、経緯台AZ-GTi-Xの標準セット品である三脚はやや剛性不足を感じていました。三脚単体をカーボン三脚と比較してみますと、セット品三脚が最短約74cm・重さ約2.5kg、カーボン三脚が最短約59cm・重さ約2.7kgになります。両者に重量的な差はあまりないですが、収納運搬時の長さが短いのがカーボン三脚のアドバンテージですね。
 セット品三脚は脚の付け根などに樹脂が使われていて、このあたりがウィークポイントになっているようです。脚を伸ばせば余計に頼りなく感じます。

 次にAZ-GTi-X標準セット品の三脚と接続した場合と比較してみました。
 カーボン三脚+GTi用延長ピラーの組合せを①、セット品三脚+GTi用延長ピラーの組合せを②、セット品三脚+AZ-GTi-X用延長ピラー(短い)の組合せを③としますと望遠鏡に触れた時の揺れの大きさは ①<②<③ となりました。感覚的には①の揺れの大きさを1とすれば、②が2、③が3といった感じです。②は三脚のたわみが加わり、③は三脚のたわみに加えてAZ-GTi-X底面と延長ピラーの接合面でのたわみが加わることが見た目からわかります。
 ①の場合、三脚から延長ピラーまでの部分は力を加えてもビクともしない剛性感があります。この組み合わせで望遠鏡に触れた時、グラグラする部分はAZ-GTi-X本体の高度軸まわりであることが良くわかります。この部分がもっとしっかりしていればうれしいのですけれど…。

②はAZ-GTi用延長ピラーの上部、③はAZ-GTi-Xセット品付属の延長ピラー

 ③の組合せでAZ-GTi-X底面と延長ピラーの接合面でのたわみが発生するのは取付方の問題だと考えられます。この部分の固定は単にねじ込みなのであまり強く力を加えると水平軸の固定部分を痛めてしまう恐れがあります。取説にも強くねじ込まないよう注意書きがあるくらいです。結果的に接合面が十分に圧着されずたわみが生じているように思います。
 それに対して②で使うGTi用延長ピラーは写真のように接合面とは分離した大きな固定ねじがあるためにAZ-GTi-Xの水平軸を固定しなくても強力に接合できます。その結果この部分のたわみはあまり感じられません。AZ-GTi-Xもこの延長筒を標準セットにすべきだと思います。

 というわけで、①カーボン三脚+GTi用延長ピラーの組合せでの運用が最も良いことが確認できました。これで強風時や望遠鏡のピント合わせ時のブレもかなり軽減されるはずです。また、カーボン三脚に付属のストーンバッグもモバイルバッテリーやスマホを置くのに重宝します。セット品三脚のトレイより圧倒的に使いやすいですね。

ポータブル赤道儀に接続

 私の所有しているビクセンの古いポータブル赤道儀SPガイドパック(1986年購入/故障もせず現役です)の専用三脚はとても剛性感があるのですが、最大に伸ばしても低いため極軸合わせやカメラの構図決定などを行う際に無理な姿勢を強いられます。もう少し足の長いしっかりした三脚に換装できればと以前から考えていました。

MORE BLUEの赤道儀用アダプター SD017
カーボン三脚に装着したところ

 接続するためにMORE BLUEの「ジッツオ5型三脚対応 ビクセン取付直径Φ60mm赤道儀用アダプター(型番SD017)」を入手して使用しました。価格は7200円(税込み・送料別)でした。
 トッププレートを外して、このアダプターをはめてみるとピタッとはまり、ロックも効いてひと安心!ポータブル赤道儀もきちっとはまって予定通りです。

左が SPガイドパック専用三脚を一番伸ばした状態

 写真のように三脚の足を一段だけ伸ばしたら高さ的にはちょうど良い感じ。元々の短い三脚と比べると20cmほど高くなって、極軸の調整などの操作が非常に楽になります。脚をさらに伸ばしても大丈夫だと思えるくらい剛性感があります。ストーンバッグも小物を置いておけるのでありがたい!
 この三脚と組合せることで、ポータブル赤道儀が快適に使用できそうです。

おわりに

 このカーボン三脚は期待通りの剛性感と軽さを併せ持ち個人的な用途にも合っていたので購入して正解でした。性能や使い勝手の良さを考えると付属品も含めて税込み31000円はなかなかコストパフォーマンスが良いと思います。気になった点をあげるとすれば、望遠鏡三脚に比べて脚の開きが若干狭いかなということくらいでしょうか。
 将来的には、この三脚に手動の経緯台(微動ハンドル付)を載せて中量級の機材を気軽に使ってみたり、小型軽量の鏡筒赤道儀一式を載せて軽快に写真撮影したりするのも良いなあと妄想が広がっております。でも、そうなるともう一つ欲しくなってしまいそうです。(笑)

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