ATOM Cam2 で ペルセウス座流星群を撮る

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はじめに

 ATOM Cam2という防犯カメラ(価格は4000円程度)で2023年のペルセウス座流星群の動画撮影を試みたので、その結果を報告したいと思います。このカメラで流星や火球が撮れるのはすでに数多くの報告がなされていて、遅ればせながら私もやってみたいと思った次第です。晴れてさえいれば自宅でも寝ながらにして出現状況を把握できる(はず?)というのが魅力的だなと考えていましたが、果たして…

当初の予定

ポータブル赤道儀に同架した2台の一眼カメラ(14mmレンズと21mmレンズ)

 2023年のペルセウス座流星群は極大の頃(12日夜と13日夜が狙い目)、月明かりの影響もほぼ無く条件が良いということで早くから遠征観測を予定していました。満天の星の下、ポータブル赤道儀に広角レンズのカメラ2台を同架して写真を撮りながらゆったりと流れ星をながめる(これが最高!)計画です。
 しかし、日が迫ってくる中で天気予報を調べると12日、13日夜は両日とも曇りや雨の予報じゃないですか!というわけで晴れる可能性の高い11日夜に京都府北部へ遠征することにしました。極大夜より少し流星数も減ることは一緒に行くことになっている星仲間のTさんにも了解してもらいました。

 ところがです。なんと10日の夜から持病のめまいが発症しまして(なぜこのタイミング⁈)、結局遠征はあきらめるという残念な事になってしまいました。めまいで車の運転はきわめて危険ですものね。Tさんには大変申し訳ないことをしました。11日は薬を飲んで横になり悶々とした時間を過ごしたのです。

自宅でATOM Cam2による撮影

防犯カメラ ATOM Cam2 2台

 12日になると幸い少し落ち着いて歩き回れるようになりました。気になって天気予報をみると13日夜は相変わらずダメですが12日夜は予報が変わって意外に晴れそうです。でも遠征は不安、でも何かしたい!と思い、自宅で防犯カメラ(ATOM Cam2)による流星の動画撮影を試みることにしました。このカメラはSNSやインターネットで流星や火球の動画撮影に使用できると数多く報告されていたので興味を持ち、今年の始めに入手していたのでした。すでにカメラの初期設定は済ませて本来の防犯カメラとしては使っていましたが、流星撮影の実戦投入は今回が初めてです。3等星がやっと見える自宅の環境で果たしてどの程度流星が捕捉できるか期待を持ってチャレンジしてみました。めまいのせいでようやく流星撮影に踏み切れたというわけです。σ(^_^;)

カメラの設定と設置・撮影

スマホのアプリ設定画面

 カメラの設定はスマホのアプリで行えます。
 流星の撮影ですからナイトビジョンをオン!モノクロになりますが感度優先で仕方ありません。ナイトビジョン用の赤外線ライトは虫なども写り込んでしまうのでオフにしました。
 検出設定ではモーション検知をオンにして感度は「高」に。これで火球など明るい流星が流れると自動的にイベント録画してくれるはず。
 録画は32GBのマイクロSDをセットしているので、SDへのローカル録画をオンにして録画モードは「連続録画」。これでモーション検知に引っかからない流星も記録できますね。
 画質は、もちろん一番良い「HD(1080p)」を選択しました。
 ピントや露出は自動でなかなか良い感じに星空を写してくれます。


 下の写真は南に向けて撮った動画から切り出した静止画です。これを見るとや座やいるか座もわかるので4等星くらいは写っていますね。また、へびつかい座のラスアルハゲ(2等)よりヘルクレス座のラスアルゲチ(3等)の方が明るく写っているのは後者が赤い星なので赤色にカメラの感度が高いことを示しているようです。なお、わし座から南斗六星あたりにかけて天の川がうっすら写っています。肉眼では3等星くらいしか見えない空、全くの自動露出でこれは大したものですね。

南天に向けて撮影したカメラ画像(拡大して見て下さい)
スライディングルーフを少し開けて2台のカメラを設置

 カメラは2台あるので、1台は北の空、もう1台は南の空へ向けるべく、写真のように天文台のスライディングルーフを少し開いて設置しました。カメラの台座は角度を調整でき、底には強力な磁石がついているので、スライディングルーフの鉄の部分にバッチリくっつきます。
 こうして明るいうちに準備をし、そろそろ薄明が終わる20時20分頃から撮影開始!たくさん記録できることを祈りつつ夜明けまで撮影しました。めまいに睡眠不足は厳禁なので、私は早々に寝床へ。でもどれくらい流れているか気になってなかなか寝れません。スマホのアプリから現在のカメラ画像をリアルタイムで見られるので、しばらく見ていると22時40分から23時の間に3個の流星を確認できました!これは期待出来るぞと確信し眠りについたのでした。

撮影動画を手動目視で確認

メディアプレイヤーで早送りしつつ流星をチェック

 翌日、5時頃に目が覚めてカメラを回収。その後2度寝(笑)。7時に起床し朝食を済ませ、いよいよ録画を確認します。少々フラフラしますが、どれだけ写っているかに興味があるのでワクワクしながらパソコンで見てみました。まずはモーション検知で明るい流星をイベント録画しているかと期待してチェック!しかし、流星の記録は皆無でした。写野内の電線に車のライトが当たった時には記録してるんですけど…(苦笑)。こうなると連続録画の長時間ファイルを確認するしかありません。(;´Д`A
 ATOM Cam2の連続録画ファイルは1分毎に分けてmp4形式で記録されています。これをメディアプレーヤーで流星が写っているか確認するのですが、まあ大変です。実時間で再生すると途方もない時間がかかるので、マウス操作で適当に早送りしながらチェックする事にしました。見つけたら流星が写っている時分秒をメモ。これをひたすら繰り返し、およそ8時間分×2カメラの動画をチェック。この作業に4時間くらいかかってしまいましたが、北カメラと南カメラそれぞれ24個ずつ写っているのを見つけました。あーしんど、頭がクラクラです。元気な時でもやりたくない作業ですな。ましてや、めまい症状のある時にやるべきではない!

北天カメラの動画をチェックして見つけた24個の流星を切り取ってつなげた動画

 しかし、何とか早く形にしたいという気力がまさり、その後、動画編集ソフトで流星の写っている部分だけを切り出してつないだのでした。X(旧Twitter)でその動画を投稿したら、もうバタンキューです!ちょっと無理しすぎました。(^_^;)

撮影動画を流星検知ソフトで確認

 バタンキュー状態の時にふと、ATOM Cam2の動画から流星の写っている個所を切り出して教えてくれるソフトを開発した人がいて公開されているという記事を読んだことを思い出しました。翌日、「ATOM Cam2」「流星」でweb検索すると複数がヒット!プログラムのダウンロードのしかたから使い方までとても丁寧に解説して下さる先達の方が何人もいらしてありがたい。この流星検知ソフトはpythonで動く meteor-detect というもので、先達さんたちの記事にしたがってインストールし、実行すると私のWindows10のPCでも正しく動作しました。開発者の方と使い方記事を書いていただいた方に感謝です!

meteor-detect の実行画面

 このソフトは1時間分をまとめてチェックするのですが、その実行時間は私のパソコンで約8分(←PCスペックによって変わるはず)でした。8時間分の処理で1時間と少し。2カメラですからその倍の処理時間必要ですね。目で確認した時間の約半分です。でも命令すれば勝手にやってくれるので圧倒的に楽で目も疲れません。流星らしきものを検知するとメッセージで教えてくれると同時にその個所の静止画(jpeg)と動画(mp4)を吐き出してくれます。静止画をチェックするとそれが流星なのかどうかがだいたいわかります。たまに人工衛星をとらえたりしますが仕方ありませんね。

meteor-detect で自動検知され吐き出された jpeg画像の一例

 この検知ソフトでチェックした結果、なんと北カメラの方で62個、南カメラの方で44個の流星が確認できました!手動の目視チェックではそれぞれ24個だったので、かなり見落としていたことになります。逆に目視チェックで見つけたけれど検知ソフトでは見逃していた流星もわずかながらあったことも報告しておきます。

写った流星について

 今回、体調のこともあって実視観測はできていないので、記録された流星の明るさがどれくらいだったかの確かめができていません。画像を見る限りでは1等星アルタイルの星像と比較しても太くはっきり線状に写っているものが多いので、そのほとんどが1等級並みかそれより明るいものではないかと想像します。機会があれば実視観測もおこなって、概ね何等クラスの流星なら写るというのがわかれば良いですね。

2023.8/12-13 南天カメラ:自動検出した流星64個
2023.8/12-13 北天及び南天カメラでとらえた明るい流星15選

 さて、今回はペルセウス座流星群の極大(13日17時)に近い日でした。写った流星を調べると北天カメラではペルセウス座流星群の流星が全62個中の48個、南天カメラでは全44個中の35個という結果でした。いずれもペルセ群流星の割合が約8割ということになります。
 また、カメラの写野は35mmフルサイズ換算でだいたい20mmレンズ相当でしょうか(縦横比が違うのでだいたいです)。それが2面ですから全天はカバーできていません。特に東西の低空に飛んだ流星は写っていないはずです。このカメラで全天をカバーするなら東西南北に各1台、そして天頂に1台、計5台はほしいところです。ただ、動画から流星を検出するのに時間がかかるので1人ではやりたくないです。(笑)

おわりに

 このATOM Cam2というカメラを始めて流星撮影に使ってみたわけですが、流星の確認用としては十分使える印象です。遠征するときも自宅で明るい流星を記録する用途で稼働させるのもありですね。防犯カメラとしてはもちろん、室内から確認できるお天気カメラとしても使えそうです。耐久性が気になりますが、これからさまざまに活用したいと思います。

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