SVBONY SV225 経緯台レビュー

目次

はじめに

 この度、経緯台SVBONY SV225を入手しましたので、この製品についてレビューしたいと思います。SV225は公称の耐荷重は10kgということで、手持ちのPENTAX 105SDHF鏡筒(バンド、ファインダー他を含めて8kg超)が使えそうだと考えて選択しました。微動ハンドル付きの比較的軽量な経緯台(2.34kg)なので、太陽や月の出入りの撮影やちょっとした天体観望が気軽にできるのではないかと期待しての導入です。この製品は記事を書いている時点でレビューが少なく実際の使用感に不安はありましたが、軽量の微動付き手動経緯台といえば定番のポルタなど耐荷重が7㎏以下のものが多いため他に選択肢がなかったというのが正直なところです。

商品の発送、梱包

 品物は中国から発送されて約1週間で手元に届きました。外箱は隅がつぶれて手荒く扱われた痕跡がありましたが、内箱には緩衝材も入っており幸い品物には損傷がありませんでした。
 中には経緯台本体と微動ハンドル、固定レバー、メタルハンドル、六角レンチは分けて納められていました。
 付属のマニュアルには7か国語対応で日本語表記もありました。しかし、図版やその説明は英語のままだったりするので、正直わかりにくかったです。

製品の外箱。角が凹んで配送された。
製品の内箱

組み立て

 早速組み立ててみました。組み立て自体は簡単でマニュアルを見なくても可能です。ほぼレバーやネジ類をねじ込むだけで済みます。ただ、載せる望遠鏡に合わせて微動ハンドルの位置が最適になるようにする必要はあります。各軸とも取付ベースに対して45度ずつ位置をずらして固定できるようになっています。三脚はカーボン三脚(ARTCISE KS90C 重量2.7kg)を使いました。経緯台とは3/8インチネジで固定できます。

さて、組み立ててみていろいろ気になったことがあったので列挙してみます。

 まず、望遠鏡の向きを変えるときに操作するメタルハンドルを最後までねじ込んでもカクカク動いてしまうが気になりました(動画参照)。

 これは気持ち悪いので、家にあった適当なスプリングワッシャをかませてねじ込みました。これでカクカク動かなくなったので良かったです。

メタルハンドルのガタつきのようす
ガタつき対策

 次に気づいたのは、軸まわりの剛性のなさです。各軸とも固定クランプを緩めた状態ではグラグラしています。さらに固定クランプを締めた状態でも力を加えると各軸とも0.5~1度くらいカクカク動いてしまいます(動画参照)。
 これは軸まわりの構造上の問題でどうしようもないと思われます。う~む、実に気持ち悪い。

軸まわりのガタつきのようす

 続いて、微動ハンドルの問題です。微動ハンドルはビクセンのポルタ経緯台のようにプラスティックでなくしっかりした金属製でできているのは良いのですが、固定ネジを指で強く締めても、しばらく使っていると緩んでしまい接続部がカクカクと動いてしまいます。これも操作する上で気に入りません。
 そこでまた適当なスプリングワッシャを介してラジオペンチでギュッと締め上げました。これでカクカク動かないようにはなりました。ところが、指で取り外しできなくもなりました(^_^;) 運搬に若干支障がありますが、操作性重視で良しとします。

微動ハンドルのガタつき対策

 最後にもう一つ、高度軸を保持するアームの角度を変えるときの問題です。望遠鏡を天頂付近まで向けるには、このアームを45度傾ける必要があります。用途によっては直立にした方が良いので、個人的にはこの2つの取付角度を変える使い方を想定しています。角度を変えるには太い六角ボルトを取り外し、取付部の八角形の型にはめてからボルトを締め直すのですが、このボルトを緩めたり締めたりするときにミチミチミチッと嫌な音がするのです。

アーム取付部にある正八角形の型
スプリングワッシャで穴の当たり面が削れる

 これは、ボルトにはさんだスプリングワッシャの出っ張った部分が擦れて筐体のアルミ合金を削る時に発する音だと思われます。現に外した時にボルトの穴から金属の削りかすがボロボロと落ちてきました。実に気持ち悪い!家には穴に入る適当な平ワッシャがなかったので、代わりに鉄製のリングを入れて削れるのを防ぎました。まあ実用上問題はないとはいえ、もう少しメーカーに配慮があっても良いと思います。

操作性

 まず最初にフィールドスコープ(SVBONY SA401 重量2.2㎏)を装着してみました。

 デフォルトの状態では、高度軸、方位軸共クランプフリーの状態にした時の動きが重く(抵抗があり)使い物になりませんでした。マニュアルによると各軸の動きやすさ(抵抗)の調整ができる六角ネジがあって、使う望遠鏡の長さや重量によって調整すべし!となっています。

SVBONY SA401 は口径85mmで20~60倍
高度軸の硬さを調整するネジ(方位軸も同様)

 各軸を支える3本のボルトを外すとその六角ネジがありました。これを緩めれば抵抗が減るというわけです。その効果は再び取付けて望遠鏡を動かしてみないとわからないので面倒くさい作業ですね。2回ほど繰り返したところ、軽く滑らかに動きかつ手を離すと止まる(フリーストップ)状態に調整できました。
 この状態で固定クランプを締めなくても微動ハンドルの操作は効きます。微動は少しバックラッシュはあるものの非常に滑らかで良い感じです。実際、固定クランプを完全に緩めた状態でオリオン大星雲やすばるを導入しましたが、メタルハンドルを握ってのフリーストップ操作も微動操作も快適で軸のガタなどは全く気になりませんでした。総重量は7㎏強!組んだままサッと外に出してサッと使えてサッとしまえる軽快なセットです。

 次にPENTAX 105SDHFを装着してみました。鏡筒にはマツモト式正立ミラーにナグラー16mmを付けています。これは倍率44倍、視野角1.9度でメジャーな星雲星団を気軽に観望したいという目論見です。そのために高度軸を保持するアームを45度の角度にし、天頂方向もカバーできるようにしています。

 PENTAX鏡筒他の総重量はバンドやファインダーなども含めて約8.3kg。そのせいかフィールドスコープ搭載時に比べると、固定クランプを完全に緩めた状態での各軸の動きはかなり重くなりました。また、方位軸の微動のバックラッシュが大きくなりました。これらは重さにより軸が傾いた影響?ではないかと思われます。

 フィールドスコープの時と同様にメタルハンドルを持ってのフリーストップは、重めながらもなめらかにできます。微動ハンドルによる操作もバックラッシュが大きくなるのは少し気になりますが、カクつくことなく動きます。望遠鏡をつかんで故意にゆするとやはり軸まわりのガタは感じられますが、重さで一方向に力がかかっているせいかガタは気になりません。いったんピントを合わせてしまえば望遠鏡に直接触れることもないので、意外にも快適に使用できます。アームの強度不足も感じません。しかし、目盛環付近に見える軸のすき間が明らかに不均等(広い箇所と狭い箇所がある)であるため、不安というか残念というか…そんな気持ちになります。見ない方が賢明かもしれません(笑)。

 他に注意すべき点が2点ありましたのでお伝えしておきます。

 1つはアームを45度に傾けたことにより重心が三脚センターからずれているため、重い機材が載っている分(方向によっては)、転倒しやすくなっています。この三脚の場合は一般的な望遠鏡三脚より開脚角度がやや小さいのでその影響もあるのでしょう。ストーンバッグに重りを入れるなど工夫が必要ですね。
 もう1つは、三脚と経緯台の接続がネジなので望遠鏡を動かした時に緩んでしまうことがありました。これについては三脚アダプターに回転防止用のイモねじがあったので、それを締めることで緩みを防ぐことができました。そのようなしくみのない三脚を使う時には注意が必要です。

ARTCISE KS90Cに付属のジッツォ互換 三脚アダプター

おわりに

 これまで組み立てたり調整したり操作したりして気づいたのは、軸まわりの構造がビクセンのポルタ経緯台に酷似しているということです。真似して作ったのか?という印象です。個人的にはポルタ経緯台のようにフリーストップ前提の経緯台はあまり好きではないので残念でした。ポルタ経緯台より軸まわりのガタが大きいように思いますが、実際に使ってみるとあまりガタを感じずに使えるのが不思議です。本当ならフリーストップができなくてもベアリングを使用したガタのない軸まわりの経緯台が良かったのですけどね。この記事を見て、経緯台を検討されている皆さんはどのようにお感じになるでしょうか。参考にしてもらえれば幸いです。

 とりあえず、PENTAX 105SDHFを載せたいという目論見は実現できそうですし、耐久性や経年変化に不安はあるものの使ってみようと思います。使っているうちに手軽に使い倒せるお気に入りの機材になるかもしれません。

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