明け方の紫金山・アトラス彗星

 2024年9月末から10月初め、紫金山アトラス彗星(C/2023 A3)が明け方の東空に見えるということで、晴れた日を狙って撮影をしたので、その様子を報告したいと思います。
 この彗星は昨年2月頃、天文学者が観測から調べたところマイナス等級に達する大彗星になる可能性があるとされ大きな話題になりました。ところが、実施はそこまで明るくならず、太陽に最も近づいた9月28日前後には2~3等級くらいの明るさで観測されています。それでも条件の良い南半球では立派な尾を伴った姿が次々と報告される中、明け方の東の超低空にしか見えない日本で一体どのような見え方になるかとアマチュア天文家の間では注目されたわけです。

 私も東の方向が開けた場所をあらかじめ調べておいて、晴れたら出撃するつもりで待ち構えていました。しかし、秋雨前線の影響かなかなか晴れません。かなりじれったい思いをしましたが、9月25日、10月1日と2日に雲越しの彗星を何とかとらえることができました。

【9月25日】

撮影地から東に向けて機材をセット

 この彗星を観測するために快晴の予報なら青山高原か鳥羽方面に遠征するつもりでした。この日は雲の多い予報でしたが、午前3時頃きれいに月が見えていたので、近くの川の堤防付近にダメもとで出かけました。
 オリオンをはじめとする冬の星座はクリアに見えてはいるものの、東の低空はモヤがかかっているのかハッキリ見えません。とりあえず、105mmレンズ+三脚、200mmレンズ+ポタ赤を準備します。彗星が山から十分昇ってきているはずの時刻になっても肉眼はおろか5cm双眼鏡でも全くわかりません。やはりダメだったかとガッカリしましたが、この辺にいるはずと見当をつけてシャッターを切りました。あらかじめ設定していたインターバル撮影です。その間、椅子に座って双眼鏡で丁寧に探しますが見つからず!低空のモヤか何かが邪魔していたに違いありません。やはり低空のモヤの影響を受けにくい標高の高い場所が有利なのでしょうね。気がつけばかなり空が明るくなってきたので、落ち込みながら撤収しました。

 ところが!自宅に帰って撮影した写真をチェックすると写っているではありませんか!!もちろんトーンカーブなど調整してのことですが、ちゃんと尾までわかります。あれだけ双眼鏡で探したのになんだかキツネにつままれたよう。いやぁ、カメラってスゴイな…。

では、この日撮影に成功した写真をどうぞ!

レンズ SIGMA105mm F1.4
カメラ Panasonic Lumix S5
露 出 F1.4 ISO640 1.6秒
三脚固定撮影
210mm相当にトリミング

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Nikon D810A
露 出 F2.8 ISO1000 4秒
ポータブル赤道儀による追尾撮影
400mm相当にトリミング

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Nikon D810A
露 出 F2.8 ISO560 4秒
ポータブル赤道儀による追尾撮影
400mm相当にトリミング

 

【10月1日】

 9/25以来、なかなか晴れてくれません。天気予報もダメダメ。一応3時とか4時に起きてみるも、雲だらけ。わりと全国的に天気悪いようですが、九州からは立派な尾を伴った彗星の写真・動画がSNSで報告されて、明るくなっていることがうかがえました。
 我慢も限界を迎えた10/1未明、空を見ると予報に反してブワッと晴れていました。慌てて準備して川の撮影地へ!相変わらず東の低空に意地悪な薄雲が退きませんが、カメラを確認すると明らかに9/25より明るく尾も長い彗星の姿がそこにありました!カメラに任せてバンバン撮影してもらう間、今度こそと前回同様5cm7倍の双眼鏡で探索します。
 ところが……なんでやねん!場所は間違いないはずなのに見えません!でもカメラのモニタ画面には見えてます。薄明の明るい背景が影響しているのか、薄雲が影響しているのかわかりませんが、不思議な感じでした。

 この日の写真は次の通りです。

レンズ SIGMA105mm F1.4
カメラ Nikon D810A
露 出 F1.4 ISO900 1秒
三脚固定撮影
210mm相当にトリミング

 比較的写りが良かった時間を3枚並べました。写真を見るかぎり尾の長さは2°くらいは認められます。4h50m~5h00mくらいに雲が無ければ…もう少し長く写ったかもしれません。5hを過ぎると薄明の明るさがうすい尾をかき消してしまうという感じでしょうか。

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Panasonic Lumix S5
露 出 F2.8 ISO2000 1.6秒
ポータブル赤道儀による追尾撮影
トリミングして編集


続いて、写真から編集したタイムラプス動画です。

レンズ SIGMA105mm F1.4
カメラ Nikon D810A
露 出 F1.4 1秒 ISO感度Auto
撮影間隔2秒で連写 三脚固定撮影
4h47m~ 60倍速
トリミングあり

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Panasonic Lumix S5
露 出 F2.8 1.6秒  ISO感度Auto 
撮影間隔2秒で連写 ポータブル赤道儀による追尾撮影
4h51m~ 60倍速
トリミングあり
※途中で露出オーバーになったので露出補正をかけました

 

【10月2日】

機材の設置状況(撤収前)  右に写っているのはTさん

 GPV気象予報をチェックすると10/2の明け方は私の住んでいる京都府南部でかなり晴天が見込めるものでした。青山高原や鳥羽まで行くと東に雲がありそうでしたので、近場で十分かと判断です。ちょうど星仲間のTさんも都合が良いとのことで、来ていただけることになりまして気分も上がっておりました。午前3時過ぎに合流し現地に到着すると冬の星座が燦然と輝き良い感じ。しかし、東の低空は黒い雲?星が全然見えません。アレ?!まっ、1時間後の撮影開始までには退いてくれるだろうとカメラを準備します。時間の余裕があったので観望機材の準備もしました。
 SkyWatcherの自動導入経緯台AZ-GTiXに82mmスポッティングスコープと70mm15倍双眼鏡を載せて(写真左の機材)今度こそリベンジです。50mm7倍双眼鏡の手持ちでダメなら、口径と倍率の高い機材の自動導入でどうだ!と気合いを入れました。

 しかぁし、彗星が昇ってくる頃になっても雲は退きません。すでに山から出ておりスポッティングスコープの視野内にはいるはずなのに見えない!写真にも写らない!オーマイガーです。念のため1台のカメラはひたすら撮影させているのですが、これでは期待薄。ようやく5時頃、彗星の高度が4度を超えるあたりで厚い雲から抜けた彗星の弱々しい姿をカメラモニタで確認できました。同時にスポッティングスコープ&双眼鏡でも微かな点のような彗星核が見えました。でも尾はほとんど見えず、前日よりも厚い雲にはばまれている感じです。その後もかすかに彗星が見える場面はありましたが、それ以上好転することはありませんでした。残念!

 この日何とか写せた写真は次の通りです。

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Panasonic Lumix S5
露 出 F2.8 ISO1600 2.5秒
ポータブル赤道儀による追尾撮影
400mm相当にトリミング

レンズ SIGMA70-200mm F2.8(200mmで撮影)
カメラ Panasonic Lumix S5
露 出 F2.8 ISO640 2.5秒
ポータブル赤道儀による追尾撮影
400mm相当にトリミング

 雲を通して何とか見えていた3枚を並べてみました。薄い雲、濃い雲がずっとじゃまをしていたのがわかります。それでも他の星(写野に4.5等級より明るい星はない)がほぼ目立たないことを考えると、この彗星はそこそこ明るいと判断できます。これで雲や薄明が無ければ立派な姿が写ったのでしょうね、きっと…。

レンズ SIGMA105mm F1.4
カメラ Nikon D810A
露 出 F1.4 1秒 ISO感度Auto
三脚固定撮影

 X(旧Twitter)では、@Taizoさんがこの日青山高原で撮影した見事な彗星の姿を紹介されていました。ちょうど私が下見でチェックした場所からの撮影でしたのでショックでした。思い切って標高の高い青山高原に行けばよかった~と後悔しても後の祭り。予報から自宅周辺では東の低空まで雲はないと判断してのことではあったのですが、お天気は難しいものですね。とほほ…(´Д`)

【これからの彗星の動向は?】

 10/3以降、ますます明け方の高度は低くなり現実にはしばらく観測が難しくなります。10/12には地球に最も近づき、10/13頃から夕暮れの西空に見られるようになります。図のように徐々に日没後の高度を上げて位置的には見やすくなりますが、だんだん暗くなっていく状況です。10月の中旬から一般の人にも見やすい時間帯になるので夕暮れ西空でどんな見え方をするのかこちらも注目に値しますね。私も可能な限り追いかけていきたいと思います。

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