私の所有しているタカハシのμ250は,現在販売されているμ250CRSとは違って旧タイプの製品です。口径250mm,焦点距離3000mm,F12のドル=カーカム式光学系で,中心像はシャープながら周辺は収差が大きいという特徴があります。CRSはそのあたりを改善していて焦点距離は2500mmのF10,専用レデューサーで1825mmのF7.3となり,周辺までシャープな像を結ぶようです。旧タイプのμ250にも×0.8の純正レデューサーがあって所有していますが,それを装着しても焦点撮影は約2400mmまでにしかならない上に周辺ではかなり収差が残ります。また,うちの天文台は木造住宅の上に設置しているため風などで結構揺れてしまいます。そのため,2400mmでもガイドの成功率は低く,より短焦点が得られるCRSがうらやましく思えておりました。同等の光学系にバージョンアップできるキットも10万円程度であるのですが,光軸に敏感で調整が難しいという情報もあり,しばらく二の足を踏んでおりました。
そんな中,今年11月末に突然神の啓示が舞い降りて,15cm屈折望遠鏡で使用しているクローズアップレンズをμ純正レデューサーに併用してみることを思いつきました。要するにレデューサーの先にクローズアップレンズを取り付けて更なる短焦点化をめざそうというわけです。
使っているクローズアップレンズをあらためて紹介しますと「ケンコー・トキナー 49mmACクローズアップレンズNo.2 MC」という商品でお値段は3000円ほど。そのままだと2インチスリーブに収まらずネジも合わないので,ステップアップリング,ダウンリングで挟み,目の粗い紙ヤスリでひたすら2インチスリーブに入るまで削りました。(;^_^A
AC(2枚玉色消し)でない単レンズのクローズアップレンズは48mm径があるのですが,ACタイプは残念ながら存在しません。というわけでこのような不細工な形になったのでした。単レンズはやはり不安がありますからね。
これを使ってCRS+純正レデューサーと同等になるとは決して思いませんけれど,たかだか3000円程度で短焦点化ができて中心付近だけでも使えれば言うことありません。一番心配なのはピントが合うかということでした。さっそく取付けてみると,幸いにも調整範囲内で何とか合いました。良かった!!
次は,焦点距離がどうなるか,周辺減光や周辺像がどうかが気になります。こればかりは実際撮ってみるしかありません。
11/28夜,良く晴れたので,最初の対象をペルセウス座の惑星状星雲M76(小あれい星雲)として撮ってみました。1分露出,3分露出で何枚かテストした結果,ガイドの成功率は1分が圧倒的に良かったので,基本的には Nikon D810AのISO10000で1分露出とすることに決定。四隅の減光や収差は画像の通り,厳しいものがありました。でもまあまあ想定内といったところでしょうか。中心付近だけ使うのであれば何とかなりそうな感じです。とりあえずISO10000で1分露出を90枚,フラット,ダークとも10枚ずつ,ステラショット2を使って撮影しました。
ステライメージ9の自動処理でコンポジットしPhotoshopで仕上げた結果がこちらです。
写っている範囲を考えると,焦点距離はおよそ1800mmに相当するので,μ250CRSに純正レデューサーを入れたくらいの焦点距離になったようです。ちょうどいいですね。写真は中心部の3600×2400ピクセルを切り出してトリミングしています。(D810Aのフル画面が7360×4912ピクセル)。フラット撮影は2mm厚のアクリル板を筒先に貼り付けて同じISO,露出時間で行っています。しかし,周辺減光が激しいからかなかなかきれいに補正ができません。でもこのくらいトリミングすると何とか補正が効く範囲かと考えています。今回はピントが甘かったのかシーイングが悪かったのか星像は少しポテッとしていますが,最初にしては上出来といったところでしょうか?M76のような小さな天体なら撮る価値はありそうです。
12/2夜には,おうし座の超新星残骸であるM1(かに星雲)を撮影しました。ISO10000 1分露出を100枚,そしてフラット,ダークとも10枚ずつ撮影して処理した結果がこちらです。M76と同じようにトリミングをしています。
かに星雲は,1054年に起こった超新星爆発の残骸で,今も宇宙空間に広がり続けています。ニックネームの由来になった かにの足のように赤く見える部分 がしっかり写りました。
ところで,言い忘れましたが,M76,M1共にCometBPフィルターを装着して撮影しています。別に所有しているQuadBPフィルターより光害カットの効果は弱いものの,星の色はこちらの方が違和感がなくカラーバランスもとりやすい印象です。
というわけで,クローズアップレンズをレデューサーに重ね付けして行ったμ250での撮影は,中心部付近だけ大きくトリミングするという条件付きで何とか実用になることがわかりました。コストを考えると十分な価値があると言えそうですね。今後,惑星状星雲や銀河などを条件の良い夜に少しづつ撮影していきたいと思います。