μ180C用 電動フォーカサーの製作

目次

はじめに

 タカハシのμ180Cは現在のところ主に月観望用途として使用しています。口径の割に軽量コンパクトで取り回しも良く性能も含めて気に入っているところですが、ピント合わせに難を感じていました。載せている経緯台の剛性不足ということもあり、ピント調整用の円筒形ノブを手で回す際にかなりぶれてしまいます。特に高倍率にするとどこでピントが合っているか、いちいち手を離さないとわからないという始末。
 そこで、μ250のような電動フォーカサーが付けられないかと思い立ち、製作してみたのでご紹介します。

電動フォーカサーの条件

 自分なりに考えて、作るならば次のような条件を満たしたいと設定しました。

  • μ180Cには手を加えないこと
  • 脱着が容易にできること
  • 高速モードと低速モードを切り替えて使えること
  • ピント合わせが片手のスイッチ操作で簡単にできること
  • できるだけ安価に作れること

電動フォーカサーの概要

上記の条件を踏まえて出来上がったのがこちら。

 小型のDCモーター(減速ギア付)をアリガタに取り付け、3Dプリンター用のベルトを介して、μ180Cのピントノブを回すというものです。
 操作はコントローラー(タカハシのシールを貼っている)の正転逆転スイッチで行います。ボックス内には006P乾電池(9V)と単4乾電池2本(3V)が入っていて、電源をトグルスイッチで切り替えることにより高速モードと低速モードが使えます。DCモーターは電圧に回転数が比例するので、高速モードは低速モードの3倍速になりますね。

 操作の様子はこちらの動画で

では、それぞれの部分を説明しておきます。

モーター駆動部

 モーターはAmazonで調達した小型の3V用DCモーターです。減速ギアがついていていくつかの回転数のものが選べます。どの回転数が妥当なのかよくわからなかったのでとりあえず試しに5rpmのものを付けてみました。しかし操作してみると思ったより遅すぎたので、結局15rpmのもの(サイズ形状は同じ)に差し替えました。

Ⅼ字金具をカット、一方にはモーター取付穴を開けた
カットしたものをアリガタに付けてあて板に

 モーターを取り付けるベースは3mm厚のアルミL字金具(50㎜×50㎜)。片側を約20㎜幅にカットし、大きい方にモーターを取付け、小さい方をモーター位置決めのためのガイド(あて板)としました。

 モーターを取り付けるのは1.4㎜のネジ2本です。3㎜厚のアルミ板にモーターの軸穴とネジ穴(1.5㎜径)を2つ、正確に開ける必要があります。手持ちの電気ドリルで穴を正確に開けるのはかなり難しい作業でした。案の定、キチンとネジが入らず、ドリルやヤスリで穴を大きくして、何とか取り付けられました。(これが一番厄介な作業でした)

モーター駆動部の主要部品
ピントノブに付けたゴムリング
アリガタに取付けたようす

 また、モーターの保護のため、単5電池ケースの端子面をカットしてトンネル状に加工したものをカバーにし、アルミテープを貼って固定しています。
 モーター軸には3Dプリンタ用のプーリー(2㎜溝)を取り付け、これに合う3Dプリンター用の全周300㎜のベルトを介してμ180Cのピント調整ノブにかけます。ベルトのテンション調整はアリガタのガイドにあてながら、モーターを取り付けた金具をやや引き気味にして蝶ボルトで固定します。モーターを取り付けた金具には蝶ボルトを通す長穴を開けていて、ガイドにあてながらスライドさせてベルトのテンションを調整できるようにしています。蝶ボルトの裏側は共回りしないよう四角のナットを付けています。これにより、手で蝶ボルトを締めたり緩めたりできるようになりました。この一か所でしか固定しませんが、しっかり固定されています。
 最初はピンと張ったゴムベルトの摩擦でピント調整ノブを回せるだろうと考えていました。しかしノブがツルツルなのでベルトが滑って思うように回りません。それで、たまたま家にあったシャワーヘッドの予備パーツであるゴムリングを3本はめたところちょうど良い摩擦で動いてくれました。その分、径が大きくなったので、モーターの取り付け位置が当初の予定より上にズレて、緩める方向に余裕がなくなるという誤算が生じました。でもベルトを外せるくらいは緩むので助かりました。

<使用部品>
ビクセン規格長さ380mmのアリガタ(MORE BLUE AU004)
オーディオファン ギアドモーター 3V 15rpm
uxcell タイミングプーリー 20歯 ボア径3 mm 2個
uxcell 3Dプリンタータイミングベルト(長さが選べる8種類入りのこちらを購入、300mm以外は使っていない)
安田 アルミアングルピース TN-142
エルパ (ELPA) 電池ボックス 単5 1本 UM-510NH
・その他、ネジ類など

コントローラー部

 コントローラーには極性を逆転できて押している間だけ通電する(モーメンタリー仕様/(on)-off-(on))スイッチが必要です。μ250では同仕様の小さなトグルスイッチでピントを調整できるようになっています。

極性逆転スイッチ、専用の配線コードが付属している

 μ250のコントローラーと同じように小さなトグルスイッチをAmazonで探したのですが、日本製の信頼できるものが見つからず、海外製のものはスイッチが固いというレビューが多い状況でした。悩んだ末、自動車の窓ガラスの上げ下げに使うようなシーソースイッチを選択しました。信頼性は?ですけれど差込式の配線コードが付属しているのに負けました(はんだ付けしなくていいですし笑)。

コントローラー内部、ギチギチです
コントローラー外観
タカハシのステッカーとテプラで装飾

 これと電源を切り替えるためのトグルスイッチ、そして006P乾電池と単4乾電池が収まるプラスチックケースを探していずれもAmazonで調達。
 部品が揃ったら、電気ドリルとヤスリで、スイッチ等の穴を開け、簡単な配線をして出来上がり。使用時にモーターとDCプラグで接続することにしました。
 ちなみにケースの寸法はH35×W65×D100mmです。

<使用部品>
タカチ電機工業 SW型プラスチックケース SW-100B
MKBKLLJY極性リバーススイッチ 3個 ジャンパーワイヤー付き
Heschen ミニチュアトグルスイッチ MTS-302  2個入り(9ピンであるが6ピンのもので良かった)
エルパ (ELPA) バッテリースナップ 6F22(006P)型用 リード線10cm付 PP-18NH
エルパ (ELPA) 電池BOX 単4×2本 直列3V引き出し用 UM-420NH
2ペア入り DC電源ケーブル 5.5mmx2.1mm
・その他、配線など

使用してみた感想

 μ180Cに正立双眼装置を使って月をのぞいて見た際のピント合わせはバッチリでした。手でピントノブを触れた時のようなブレはなく快適にピントを合わせられます。400倍くらいの高倍率でも低速モードで問題なく合わせられます。
 双眼装置のパワースイッチで倍率を変える時(詳しくはこちら)はかなりノブを回す必要がありますが、高速モードを使えば数秒で合焦付近に持ってこれます。(5rpmのモーターの時は20秒近くかかっていました)これを味わうともう手動でノブを触りたくないですね。μシリーズは全て標準で電動フォーカサー仕様にするべきだとさえ思います。(まあ、高速モードで音が少々うるさいのはご愛嬌。個人的には全然許せます。)
 ただ、何日も使っているとやはりコントローラーがでかいなと思い始めました。ピント合わせは片手でできますが、低速ー高速(つまり電池の切替)のトグルスイッチは片手で操作しづらい!そもそもピント合わせのスイッチがでかいのです!おまけに電池が2種類も入っている!そりゃ~ケースもでかくなりますよね。
 そこで、小さいスイッチをなんとか探し、電池も006Pの9V電池だけにして、コンパクトなコントローラーにしたいと強く思った次第です。

 というわけで、コントローラーのコンパクト化に挑みました。

コントローラーの改良

電源降圧モジュール

 コンパクト化に必須となる小型のピント合わせ用スイッチですが、Amazonではなくマルツオンラインで国産のものを見つけることができました。また、Amazonで電圧を調整できる小型のDC電源降圧モジュールを発見!(これで9V電池から3Vに変換できますし、必要に応じて微妙に電圧を変えることもできます)そして同じくAmazonで適当な小型ケースも見つけて、部品が収まるか検証した上でそれぞれ購入しました。
 購入した電源降圧モジュールは通電すると基板上の超小型LEDが光るようになっています。これでは微小ながら電力を消費してしまいます。そこで、電源を入り切りできる小さなスライドスイッチと電源が入ったことを確認できる赤色LEDを追加で組み込むことにしました。つまり使う時だけ電源スイッチを入れ(赤色LEDが光る)、使用後は切る(赤色LEDが消える)という使い方になるわけですね。9Vと3Vの切り替えは先に購入したトグルスイッチが2個入りで1個余っていたのでそれを使います。

わかりにくかったらゴメンナサイ
改良コントローラーの内部、やはりギチギチです

 部品等の配置や配線は図のようにしました。
 ケースに穴を開けて、部品をはんだ付けなどして組み付けるのですが、手持ちの電線が必要以上に太かったこともあり、苦戦しました(^_^;)。一番大変だったのはスライドスイッチのネジ止め!すべて配線はんだ付けした後だったので大変でした。ケースが小さいしナットを押さえる指が入らないんです。細いラジオペンチでナットを挟み、何とかネジを締めることができましたが、かなり時間を要しました。
 ちなみにケースの寸法はH30×W50×D75mmです。

改良コントローラーの外観
新旧コントローラーの大きさ比較

 小さいことはいいことですけど、組み付けるのは困難が伴いますね。まあ、最終的には上手くいってケースに収まったので良しとします。
 また、ケーブルは短くて太くしっかりしたものを使用したので、DCプラグを接続してぶら下げておけばOK!これからはこれをメインで使っていきます。
 最初に作った大きい方のコントローラーは長い柔らかいケーブルを使っているので、撮影等で離れたところから操作する時にも利用できると考えています。いざという時の予備にもなりますし大事にとっておきます。

 モーター駆動部はそのままで、コントローラーだけ差し替えてさっそく使ってみました。こりゃあ~いい!!コンパクトで手にすっぽり収まり、右手の親指ですべての操作が軽快にできるので非常に快適です。改良コントローラーで操作している動画はこちら。

<使用部品>
エルパ (ELPA) 工作用BOX ブラック HK-BX01(BK)
ミヤマ電器 トグルスイッチ 双極(ON)-OFF-(ON)【MS500JF】
Heschen ミニチュアトグルスイッチ MTS-302  2個入り(9ピンであるが6ピンのもので良かった)
JUTOSU DC電源降圧モジュール 小型 2個入り
エルパ (ELPA) LED電球 25mA 5個入 φ3mm レッド HK-LED3H(R)
エルパ (ELPA) スライドスイッチ3P HK-SLS01H
エルパ (ELPA) バッテリースナップ 6F22(006P)型用 リード線10cm付 PP-18NH
・その他、配線等

おわりに

 今回、久しぶりに電気工作をしました。振り返ると苦労はしたものの楽しかったです。一方、必要な部品代を計算してみると380mmアリガタやネジ等こまごまなものも含めると2万円弱でした。コントローラーを2台作ったこともあり意外にかかってしまったなぁという印象です。しかし、ピント合わせのストレスから解放されたので、それだけの価値はあったと言い聞かせておきます。もっとスマートな設計・方法があるかもしれませんが、9Vと3Vを切り替えて使うという発想から形にできて満足しています。
 一つ懸念点があるとすれば、モーターの耐久性でしょうか。Amazonの商品情報では動作電圧が”3V-6V”となっていましたから、9Vは範囲外か?というのも少し気にはなるところです。とりあえず長期間使用に耐えてくれることを願います。モーターは約1000円と高くはないので入手できるうちに予備を購入しておくのが良いかもしれません。
 最後になりますが、今回の記事がμ180Cのユーザーさん(もちろんそれ以外の方も)の少しでも参考になればうれしいなと思っています。

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