月面ス

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月面スとは

 月齢10くらいの時に月南部の欠け際で「ス」の文字が浮かんで見えるタイミングがあります。これを月面スと呼んでいます。
 明確に見えるのは、有名な月面Xと同様に年に数回、およそ2時間くらいの限られた時間です。見るためには望遠鏡が必要で倍率は100倍以上あれば小型望遠鏡でも確認することができます。
 この月面スに気づき名前を付けられたのは私の知る限り、2021年3月ぬんま氏(@DldpKOzvfKLpzsc)がTwitter上でツイートされたのが最初のようです。私はそれに気づかず2022年12月3日の月面拡大撮影時に独立に発見しました。
(その時のようすや特定の経緯はこちらの記事をご覧下さい)

拡大してご覧下さい
日没前後の明るい空でも確認できます!

 月面スの位置は有名なティコクレーターの近くにある大きなクレーター、ロンゴモンタヌスのやや西となります。ここに太陽光が月面上の東からきわめて浅い角度で当たった時に「ス」の文字が浮かび上がって見えるというわけです。偶然の産物とはいえ、おもしろいものですね。
 さらにくわしい位置についてはこちらの「月面ス:場所の特定」をご覧下さい。

月面スの見え方

 では実際に月面スは望遠鏡でどのように見えるのでしょうか?有名な月面Xと写真で比較してみることにしましょう。次の画像をご覧下さい。

 この写真は同じ望遠鏡とカメラで撮影した月面Xと月面スを並べたものです。両日の月の見かけの大きさはほとんど変わりませんので、月面スと月面Xはサイズ的にはほぼ同等と言えるでしょう。月面Xが小型望遠鏡100倍程度の倍率で確認できるように、月面スも同様の倍率で確認が可能です。ただし、クッキリ明るく見える感じは月面Xの方が勝っているように思います。したがって、写真に撮る場合は露出オーバー気味でないと写りにくいので注意が必要です。

 ところで、月面スは月面Xと比べると大きな問題が1つあります。
 それは天体望遠鏡で見ると逆さまに見えたり(直視の場合)、左右が反転して見えたり(天頂ミラー使用の場合)することです。月面Xの場合は逆さまに見えようが、左右反転して見えようがXですが、月面スはスに見えないことになります。

 したがって天体望遠鏡で月面スをスに見るためには正立ミラーを使用する必要がありますが、比較的高価で入手しにくいのがつらいところです。もし、正立ミラーが用意できなかったら、「ス」になるよう脳内変換して下さいね (笑) 。

倒立像では「と」に見えますね!

 次に、時間の経過とともに月面スの見え方がどのように変化するかを紹介します。

スの右隣にある大きなクレーターは ロンゴモンタヌスです

 望遠鏡は25cm反射(タカハシμ250)に2倍エクステンダーを装着し、ZWO ASI174MM(モノクロCOMSカメラ)で1500フレームの動画を撮像しました。それぞれの動画の画像処理はAutoStakkert3やPhotoshopで同様に行っています。
 そして、それらの画像をトリミングして並べ、変化がわかりやすいよう組写真にしたものがこれです。ご覧の通り、徐々に「ス」が現れ、やがて周りの地形も目立ってくるようすがわかります。「ス」の形は22:00前後がわかりやすいでしょうか。

 ところで、この写真を見た外国の方から「ス」というのは「髪をたなびかせ走っている人の姿」のことか?とのツイートがありました。「ス」の右上が頭で、手を横一文字に広げて右の方へ走っていくピクトグラムのような人の姿です。そう言われればそう見えますね (笑) 名付けて「月面ランナー!」
「月面ス」は日本以外では通用しませんが、「月面ランナー(Moon Runner)」なら国際的に通用しそうです。天頂ミラー使用時にも左右逆になるだけで問題なしですね!

月面スの予報

 では月面スはいつ見えるのでしょうか?
 今までの観測データから、月齢10前後で月面スの中心位置(月面上)での太陽高度がおよそ -0.4度~-0.5度の時によく見えることがわかりました。この条件に合う日時を予報してみます。(計算についてはこちらの月面スが見える条件をご覧下さい)
 下表「見やすい時刻」の前後1時間くらいは見えるかと思います。多少の誤差はご容赦下さい。今後の観測からこの条件が修正される可能性がありますので、この予報はあくまでも暫定的なものとご理解下さいませ。
 なお、写真で撮る場合は露出オーバー気味に撮るか、下の予報時刻(眼視のピーク時刻)より1時間以上経過してから撮ると写りやすくなります。

【2023年の予報】

月 日見やすい時刻条 件  備    考
1月31日22時 頃月の高度が高く、2023年で最も条件が良い
4月30日18時 頃日没前で空がまだ明るい
6月28日19時半 頃日没頃で空がまだ明るい。時間と共に空が暗くなり見やすくなる。
8月26日16時半 頃××日中の明るい空で、かなり月の高度が低い。透明度の高い晴れた空だと見えるかも?
12月22日15時半 頃×日中の明るい空で、月の高度が低い。透明度の高い晴れた空だと見えるかも?
かなり月の高度が低い…15度未満(京都)  月の高度が低い…15度以上30度未満(京都)

【2024年の予報】

月 日見やすい時刻条 件  備    考
2月19日21時半 頃月の高度が高く、2024年で最も条件が良い。
5月18日16時半 頃×日中の明るい空で、月の高度が低い。透明度の高い晴れた空だと見えるかも?
7月16日16時 頃××日中の明るい空で、かなり月の高度が低い。透明度の高い晴れた空だと見えるかも?
10月12日22時半 頃空は十分暗いが、かなり月の高度が低い。
12月10日23時半 頃月の高度が低い。
かなり月の高度が低い…15度未満(京都)  月の高度が低い…15度以上30度未満(京都)

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以下は、当サイト内の月面スに関する記事です。撮影した写真も載せております。

月面に浮かぶ「ス」の文字 発見! | 月と星空の探訪 (tukihosi-tan.com)

2023.1.31 月面スの観測 | 月と星空の探訪 (tukihosi-tan.com)

2023.4.30 明るい空で見れた月面ス | 月と星空の探訪 (tukihosi-tan.com)

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