2023年5月6日 半影月食

 2023年5月6日 午前0時過ぎから未明にかけて半影月食が起こりました。事前に確かめた天気予報によると全国的に悪天候で当地(京都府南部)でもかなり雲の多いことが予想されました。しかし、意外にも良く晴れて食の最大を含む結構な時間、観測することができたのでそのようすをご報告したいと思います。

図はステラナビゲータ12で作図

 今回の月食は、図でわかるように本影にかなり近いところを通過する半影月食です。本影に月が一部入ると部分月食、すっぽり入ると皆既月食になります。半影月食は本影に近いほど暗いのが特徴です。
 半影月食中の月面から太陽を見ると一部地球に隠された部分日食が見えることになります。本影に近い月面では太陽の欠け方が大きいため太陽光の到達量が少なくなるので、地球から見ると暗く見えるわけです。
 半影月食は一般的に肉眼でわかりにくいとされていますが、今回のように本影に近い時は一部が暗く見えるようすが肉眼でもわかると言われています。

15cm屈折(APM ZTA152/f=1200mm)直焦点

 さて、5月5日宵の夜に空を眺めていると案の定雲が多く、昇ってきた月がなかなか姿を現しません。それでも20時を過ぎたころ、雲切れ間が出てきて月がきれいに見えるタイミングに恵まれました。まだ高度は低かったですが、天気は下り坂なので、とりあえず撮影しておくことに。月食時は雲で隠されそうなのでこれが撮れただけでもラッキーという気持ちでした。
 それでも一縷の望みを抱きつつ、早めに仮眠して月食観測に備えることにしたのです。

 目を覚ますと時刻はなんと1時過ぎ!月食始まっているやん?! 0時には起きるつもりやったのに! どこかに月食観測は無理だろうという気持ちがあったからでしょうか、寝坊してしまいました。まあどうせ曇っているやろうと外に出てみると、まさかの快晴! 思わず「うっそぉ~」と声が出てしまいました。そこからあわてて着こんで撮影準備。真夜中過ぎにバタバタです。とりあえず、いつも月面全体像を撮影している15cm屈折(APM ZTA152)とカメラ(Panasonic Lumix S5)で10分毎に撮ることにしました。
 以下、撮影結果です。

15cm屈折(APM ZTA152/f=1200mm)直焦点

 まずは2時23分食の最大のようすです。先にお示ししたおよそ6時間前(5/5 20時26分)の写真と比べると月面の北側(上)がかなり暗いのがわかりますね。肉眼で見ても暗くなっているのが明らかにわかりました。さすがに本影ぎりぎりのところに来ているだけのことはありますね。感覚的には食の最大の30分くらい前から暗くなっているのがわかりやすくなった印象でした。

クリック(タップ)して大きくご覧下さい

 続いて、違いがわかりやすいように30分毎の写真を並べてみました。食の最大の1時間前から撮影を開始したので、食の最大の1時間後までの5枚で構成しています。写真に撮ると肉眼で見るより暗くなって写ります。月の写真では模様がくっきり見えるようにコントラストを高める画像処理をおこなったりしますが、そうすると肉眼で見るようすからますますかけ離れますので、今回はほぼカメラで撮って出しの状態にしています。

 最後に10分毎に撮ったものをアニメーションにしてみました。
 この中で3時以降のものは薄雲がかかった状態でした。そのため明るさを補正したり雲の濃淡が写りこんでいる影響で少々影のようすが不自然になっている気がします。その点はご容赦くださいませ。

 こうして観測をしてみると、あらためて月食は長丁場だなと思います。今回は4時間強でしかも真夜中から未明にかけての時間帯ですから、全過程を観測する人はよほど熱心な方ですね。

こたつの台の上にパソコンや時計、飲みものを置く

 私の場合、自宅の天文台なので比較的負担は軽いかと思います。当夜は最低気温が15℃くらいでそれほど寒くなかったですけど、じっとしていると冷えを感じましたので、小型のこたつを時々つけて過ごしました。10分間隔の撮影なので途中トイレに行ったり、コーヒーを飲んだりおやつを食べたりパソコンでツイッターなどを見たりしていましたのでそれなりに楽しめたと思います。

スライディングルーフ仕様の天文台(当夜のようす)

 本当は食の終わり(その時の月の高度は約7度)まで撮影したかったのですが、天文台は東西に開くスライディングルーフなので、ルーフが邪魔で低高度まで追いかけられません。ちょうど3時頃から薄雲が西の方から広がってきたので、食の最大の1時間後でキリをつけることにしました。寝坊で食の最大の1時間前から撮影だったのでちょうど良かったかなと思います。

 天気予報で半分あきらめていた半影月食でしたが、天からご褒美をもらえた気分でした。(おわり)

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