2024.8.10 スピカ食

 2024年8月10日 月齢6.0の月に1等星スピカが隠される「スピカ食」がありました。覚えていませんが、日本で見られた前回のスピカ食は2013年8月12日夕方にあったようです。その時の月齢は5.5ですから今回と似ていますね。11年ぶりですから久しぶりの現象です。
 私としても楽しみにしていましたが、幸い好天に恵まれて観測ができましたので、この場で報告したいと思います。

観測に使用した機材

 今回のスピカ食は西の低空で起こりました。困ったことに自宅の天文台の望遠鏡では月をとらえられません。天文台はスライディングルーフ仕様で東西に屋根が開くため、その屋根が邪魔になるのです。仕方がないので、ルーフバルコニーに野外用の赤道儀(タカハシEM-200)を組んで、そこに望遠鏡(タカハシμ250)を載せて撮影することにしました。
 その隣には自動で追尾する経緯台(SkyWatcher AZ-GTiX)に7cm双眼鏡と82mmスポッティングスコープを同架して、ちょうど帰省中の娘夫婦に観察させることにしました。

 観測はμ250の鏡筒に2倍のエクステンダーを付け PanasonicのLumiix S5で動画撮影をしました。月面が露出オーバーにならないよう感度とシャッタースピードを決めましたが、スピカは1等星で明るいので十分写ります。一方、時報を読み上げてくれるサイト「インターネット時報」(https://azo234.github.io/timesignal/)をノートパソコンで立ち上げてその音声をカメラのマイクで動画に記録しました。これで動画を確認すれば、スピカが月に隠される「潜入」と月から出てくる「出現」の時刻がわかるというわけです。このサイトは「ページを開いた時にデバイスとJSTの誤差を取得し、デバイス時刻から誤差を差し引いて表示しています。(NICTのNTP→サーバ修正→ローカル修正)」とのことですが実際どの程度の誤差が含まれるかはよくわかりません。

 というわけで、潜入、出現の記録画像がこちらです。

 音声は、潜入、出現時のタイムラグのある叫び?や娘夫婦とのたわいのない会話も入っているので非公開です(笑)。
 この動画を調べたところ、京都府南部の自宅では、潜入が20時20分34秒、出現が20時52分03秒という結果でした。見た感じは一瞬で消えたり、現れたりしますね。一般的に恒星は太陽のように大きな星ですが、あまりに遠いところにあるために点光源とみなされています。

潜入、出現時における動画1コマ毎の画像

 では、本当に一瞬での現象なのか、動画から潜入、出現の際の動画フレームを1コマ1コマ切り出して調べてみました。動画は30fpsなので1コマ1コマは1/30秒毎となります。これを見ると潜入は完全に消えるまで3コマを要し、出現も完全に現れるまで3コマを要していることがわかります。したがって、それぞれ時間的には1/10秒~1/15秒かかっていると推察できます。60fpsで撮った方がさらに詳しくわかったなと編集しながら思いました。
 さて、スピカは距離が約260光年にある恒星です。ただし、太陽質量の11倍と7倍の星がわずか1800万kmという近距離でまわり合っている連星です(さらに3つ軽く暗い恒星が回っておりスピカは5重連星と考えられています)。連星であることが段階的に明るさを変える原因になっている可能性があるかもしれませんね。くわしい方がいらっしゃったら是非教えて下さいませ。

 動画とは別に、スピカ食の経過を1枚にまとめた画像も作成しました。これはμ250にレデューサーを付けて潜入前の20時00分と20時10分、出現後の21時02分に撮った写真と動画で撮っていた潜入前20時20分と出現直後の20時52分過ぎのスピカの位置を参考に比較明合成で1枚にまとめたものです。21時02分に撮ったスピカの星像は高度約6度と低いだけに大気分散でかなり色ずれがおこっていますね。

 というわけで、一応の記録としてまとめることができました。次回のスピカ食は2024年12月25日の夜明け前に起こります。晴れてくれることを祈りつつ、今回の経験を元により良い観測ができればいいなと思います。(おわり)

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