2024年12月8日、西日本・北海道・東北の一部を除く地域で見られる土星食がありました。各地でおおむね薄明終了後の18時過ぎに見られ、上弦前の月の高度も高く、条件としては文句の付けようがない土星食。国立天文台によるとこれほどの好条件で日本の広い範囲で見られる土星食は2002年3月20日(京都では食にならず)以来とのことで、私も観測したかどうか覚えがないほど久しぶりのこととなります。
京都付近ではちょうど月の明暗境界付近に土星が潜入するという、なかなか珍しい見え方。もう少し言えば潜入開始時は月の暗縁へ、潜入終了時は明縁へ入るというレアケースとなります。
2024年は7月25日にも土星食がありましたが、白昼の青空の中での現象だったので非常に見づらく感動するものではありませんでした。
そのようすはこちら↓
そんなこともあって、今回の土星食はとても楽しみにしていたわけです。
ところが、天気予報によれば雨のち曇りの心配な予報。京都府南部の自宅では当日16時ころまでしょぼしょぼ雨が降っておりました。半分あきらめムードで17時過ぎに空を見上げると大きく雲が開いて月が見えているではありませんか!非常にラッキー!!天が味方をしてくれました。
今回の撮影はμ250(焦点距離3000mm)に2倍のリレーレンズを装着しミラーレスカメラ(Lumix S5)の一番小さい画角(PIXEL/PIXEL)の4K動画の最高画質(4:2:2/10bit、MOV形式)で記録するという計画。ふだん行っている月の拡大動画撮影と同じ手法です。こういう一発勝負の天文現象は慣れないことをすると失敗することを過去に経験しているので、これが確実だと考えました。前々日に土星をISO6400、1/30sの設定で撮ればそこそこ写ると確認していました。しかし、その設定でこの日の月に向けるとやはり露出オーバー気味。カメラのISO AUTOにセットすると2500~3200の間になってしまいます。これでは土星が少々暗いので、露出オーバー覚悟でISO AUTO、露出補正+1.0にセットしました。時おり雲が通過している天気だったのでISO固定ではなくISO AUTOにするという判断です。
現象が始まってみると幸い雲のじゃまもほとんどなく動画を記録することができました。望遠鏡で見ていない方も多くいらっしゃると思うので、少々長いですが実時間の潜入と出現の動画(720p)をそれぞれご覧下さい。実際にのぞいた気分になってもらえたら幸いです。
長いのはイヤだ!という方は潜入と出現をまとめて5倍速に縮めた動画(1080p)をどうぞ!
では、いったい潜入と出現の時間などはどうだったのか、動画から切り取った画像を並べてお話しましょう。
【潜入】
潜入はなかなかドラマチックでした!動画をじっくり見ると土星本体よりわずかに環が先に隠れ始めたように見えますが、望遠鏡でのぞいた感じでは本体が隠れ始めてから環も隠れていたのに気づいたという印象でした。隠された部分から月の暗縁の形状がわかったのは面白かったです。
その後、月の明縁のとがった光点に土星本体が食い込んでいくもの興味深かった!光点と土星本体の明るさの違いが良くわかりました。
徐々に土星本体が月に隠されていき、隠れ切った時、わずかに環が残っているのがわかりました。
土星本体が月に入り始めて(第1接触)から完全に月に隠される(第2接触)までおよそ1分42秒。ただし、動画でハッキリそれぞれの瞬間を知るのは難しいのでけっこうな誤差はあると思います。
【出現】
出現は月の明縁からとなりました。土星は環から出てきます。その環が出てくるタイミングをとらえようと望遠鏡を食い入るように見ていましたが、ほとんどわからず、気がついたらちょろっと棒状の環が見えて、あれっ!?もう出てるやん!って感じでした。土星本体が出てくる瞬間も月に比べて暗いために明確にはわかりませんでした。ある程度本体が月から出たところで、やはり土星って暗いのねって思いました。そしてわずかに黄色っぽく色づいたようすもわかってきました。
本体が出始めて(第3接触)から出終わる(第4接触)まではおよそ1分54秒。環が出始めてから出終わるまではおよそ3分41秒かかりました。これもたぶんかなり誤差はあるでしょう。惑星食の場合、星食ほどハッキリと時刻を求めることはできませんね。
以上、ご覧いただいていかがだったでしょうか?
今回は撮影をビデオ記録一本にしたのであまりバタバタしませんでした。おかげで録画開始したら、その後は望遠鏡で食のようすをじっくり見ることができました。月が土星の前を横切っていくさまをながめているとやはり物理法則の通りに大きな天体が運行しているんだと実感します。加えて冒頭でも述べた通り、月の明暗境界線近くに潜入していくのを体験できたのは貴重だったと思います。おお~っ!と自然に声が出ていました(笑)。本当に晴れてくれて良かったです。
さて、5倍速の動画をX(旧Twitter)に投稿したところ、多くの方にイイねをいただきました。とてもきれいに撮れているとほめてもらったりもしました。この場をお借りしてお礼を述べたいと思います。ありがとうございました。(おわり)