2022年2月28日、昇る夏の天の川を撮影するため三重県南伊勢町に位置する鵜倉園地の見江島展望台へ行きました。2月から3月は夜明け前、夏の天の川が東の空に寝そべって昇ってくることから、近年星屋さんに人気の撮影テーマとなっています。私はまともに撮ったことがなかったので、ぜひ撮ってみたいと考えていました。天気予報によると広範囲に雲一つない晴れが期待できるということと月曜日の夜明け前なので撮影地も混んでいないだろうことから、このチャンスをものにするべく決行したのでした。
撮影地は昨年12月のふたご座流星群の撮影で初めて訪れた場所で、今回3度目です。そこでの視界のようすやカメラの適正露出などはだいたいわかっているので安心感がありました。夜の7時頃から仮眠して真夜中0時過ぎに自宅を出発。現地駐車場に着いたのは午前2時半過ぎでした。まだ早いので車内でゆっくり腹ごしらえをした後、防寒具を身に着けて、いざ撮影へ。
展望台にはすでに2人の先客がいました。カメラは東に向いていますので、どうやら目的は同じようです。彼らの邪魔にならない場所にカメラをセットして撮影を開始したのが3時過ぎです。後から2人やって来られたのですが、その際に車のライトが手前の手すりに当たり、この写真のように写野の一部が明るくなってしまうのに気づいてしまいました。
というわけで、車のライトの影響のないところへ撮影場所を変更して、4時半頃から再び撮影開始。
レンズはSIGMA 14mmF1.8(LeeのNo3ソフトフィルター装着)、カメラはNikon D810A、露出はF2、ISO6400、13秒です。カメラのレリーズをロックしてひたすら撮っていきました。それらの中から4シーン選定して紹介します。(なぜか中途半端な11分間隔になってしまいました)
いずれもSequatorというソフトで11枚分をコンポジットし、Photoshopでレベル調整、カラーバランス調整などを行っています。ピントが若干甘いのとレンズ収差の影響で、拡大すると星像はいびつです。まあそこはご愛敬ということで…。
① 午前4時42分
まだ月が昇っていません。画面中央下に見える大きな白い〇は金星(-4.6等)。金星の右下の小さく写っている星が火星(1.3等級)。山の上の明るい光は灯台。水平線付近の明るい光は漁船の光です。ソフトフィルターを装着しているせいで明るい光源は盛大ににじみます。(笑)
② 午前4時53分
月が水平線から昇ってきたところです。大気による減光で暗く赤い月(月齢26.6)の姿が金星の下に小さく写っています。拡大してご覧下さい。
③ 午前5時4分
月の高度が1度を超えて明るくなってきました。そのため露出オーバーで月はオレンジ色の〇に写っています。また、天文薄明の開始が5時1分なので、少し太陽光の影響が出始めています。
④ 午前5時15分
薄明が進み、空が明るくなってきました。月が昇るとともに明るさを増し赤みがなくなってきました。肉眼では空がオレンジから群青へ美しいグラデーションを描き、薄れゆく天の川と水平線の間に金星とシャープな細い月が見事なアクセントになっていました。このようすを見ながらコーヒータイム。至福の時間です。
次は、連写した静止画から作成したタイムラプス動画です。
4時35分~5時22分までの変化で、およそ300倍速。本当はもっと早くから長い時間撮影するつもりでしたが、途中で場所を変えたのでいたしかたありません。それでも月が昇ってだんだん明るくなるようすや薄明が始まって空が明るくなるようすがわかります。
他に、船が移動するようすや人工衛星が動いていくようすもわかりますね。Sequatorでコンポジットするときにこれらは排除されております。
最後に、金星・火星・月を望遠レンズでとらえた写真も紹介します。
SIGMA 100-400mmズームレンズを装着したLumix S5カメラを三脚に固定して撮影しました。焦点距離は100mm、 F5.6 ISO5000 2秒露出で撮影です。
上から金星(-4.6等)・火星(1.3等)・月(月齢26.6)と並んでいます。よく見ると金星・火星の周囲には細かな星がかすかに写っていますが、これらはいて座の5等級前後の星です。
ただ、強度の低い三脚の足をいっぱいに伸ばして撮っていたので、なかなか星が点に止まって写ってくれませんでした。これでもその中ではマシな1枚です。(;^_^A
以上のように、昇る夏の天の川の撮影は金星・火星・細い月とアクセントも加わって何とか成果物を得ることができました。灯台と漁船の灯りは想定外に明るかったのが残念でした。それともう少し長時間のタイプラプス動画を狙っていたのですが、またそれは次の機会に狙いたいと思います。
この撮影地は3回目ですが、やはり内陸部に比べて寒さがマシです。当夜の気温は3~4度。それに風が弱かったので寒く感じませんでした。手袋は付けずに済んだほどです。
特筆すべきは観測の大敵である露や霜が3回とも全く降りなかったことです。冬は北風でいくつも山を越えて到達することからおそらく乾燥しているのでしょう。これは観測には非常にありがたいです。内陸部ならきっと霜が降りていたと思います。車の外装もカラッとしていて気持ち良く帰路につけました。(終)