暗い空の紫金山・アトラス彗星

 紫金山・アトラス彗星は10月13日と14日に予想以上に素晴らしい姿を見せてくれました(そのようすはこちら)。しかし、薄明の残る明るい空の中だったので、今度はぜひ薄明後の月明かりもない暗い空でその雄姿を眺めたいという思いがわき上がってきたのでした。その条件に合うのが10月20日以降。天気予報をチェックしてそのチャンスを待っていたところ、20日に福井まで行くと見れそうだということで、思い切って遠征してまいりました。その結果をご報告したいと思います。

GPV気象予報

 画像はGPV気象予報です。これを見ると20日18時は福井県の北部が快晴の領域。越前海岸あたりだと西の方は海で街灯りの影響が少なく視界も開けているはずです。そこでグーグルマップを調べ海岸沿いの駐車場をチェックして観測場所の目星をつけました。
 当日は、昼過ぎに星仲間のTさんをピックアップして京都を出発!日曜日ではありましたが、高速は渋滞なくスムースに福井県まで入れました。

茂原海水浴場の駐車場からのようす

 敦賀ICを降りて国道8号線を北に上がり、途中から越前・河野しおかぜラインという海岸沿いの道路に入ろうとしたところ、なんと!高波のため通行止め!!! 嫌な予感です。
 仕方なくもう少し8号線を北上し、国道305号線へ左折。(通行止めではないさっきとは別の)しおかぜラインに入りました。海岸線沿いにはあちこちに無料で停められる駐車場があってどこにしようか迷うほどです。結局、茂原海水浴場の駐車場に決定しました。ここは海水浴場だけあって他の駐車場のように高さ1mくらいの防波堤?のような障害物がなくカメラを低く安定して設置可能です。それにトイレもあって安心なのでした。ただ、心配していた風はやはり強くて、波は時おりサブ~ンと音を立て水しぶきをあげています。これについては海からの距離も取れて問題なしと判断しました。

破損したバーティノフマスク

 現地の天気は良く晴れていました。しかし、意地悪なことに肝心の西の低空に雲が溜まっています。そのせいで水平線に沈む夕日は拝めませんでした。残念!
 また、南西方向にはわりと高いところまで雲があり攻めてこないかすごく気がかりでした。
 まあ、ここまで来たらじたばたしても始まらない。腹を据えて機材の準備に取りかかります。日没後の徐々に暗くなる中、ここでトラブル発生!望遠レンズのピント合わせ用に使っていたバーティノフマスクが強風にあおられて落下し破損してしまったのです。やっぱり樹脂製は強度不足でダメですね~_(T_T)

矢印の先は 海の近くに設置した三脚+カメラ(20mmレンズ)

 さて、今回の私の撮影は2通り。1つは長い尾であることを期待しフルサイズ20mmの広角レンズで、金星、アルクトゥルス、天の川も写野に入れつつタイムラプス撮影をする。もう1つはポータブル赤道儀に中望遠レンズを載せて薄明や月明かりのない時間帯に彗星の全景を狙うというものです。
 もちろん撮影の合間に双眼鏡でじっくり観望することも忘れてはおりません。


 まずは広角レンズの撮影結果からご紹介します。

18h26m / SIGMA20mm+Lumix S5 / F1.4 ISO3200 6s トリミングなし

 これは日没から1時間10分くらい経過のまだ薄明が残っている時の写真です。アンタレス・金星・アルクトゥルスが雲に隠れる前ということでピックアップしました。彗星の尾がラスアルハゲ近くまで伸びているのがわかります。ざっと20度というところでしょうか。広角20mmレンズなのでわかりにくいですが、肉眼で見てその長さに驚きましたよ。この彗星で見た今までで一番の長さでした。
 なお、海の色が良くわかるのはたまたま駐車場を去る車のライトが照らしてくれたせいです。
 それにしても南西方向の天の川が写るべき領域に雲がしつこくあって退いてくれません。彗星もいつ隠されるかひやひやしていました。

18h49m / SIGMA20mm+Lumix S5 / F1.4 ISO3200 6s トリミングなし

 次に薄明が終わって10分後、月がまだ昇らない時の写真です。相変わらず彗星に迫る雲がありますね。南西低空の雲が黄色く光っていますが、これは地上からの人工光でしょうね。暗くなるまでわかりませんでした。ただ、街中で見ることを考えれば十分暗い空だと思います。
 そんな中での彗星の見え方は、5cm7倍の双眼鏡では尾が視野を完全にはみ出し、7cm15倍の双眼鏡ではコマ(彗星の頭部)が背景の空に対して浮き上がって見えるほどの迫力がありました。10月13日に薄明の中、肉眼で見えて感動しましたけれど、その時から光度が落ちたとはいえ暗い空での見え方はやはり違います!Tさんとは来たかいがありましたね!ホント良かったですね!とあらためて感動を分かち合ったのでした。

300倍速のタイムラプス動画

 これは全て同じ露出で連写した673枚の写真から作成したタイムラプス動画です。18時14分(およそ日没1時間後)から20時06分までを22秒の動画(300倍速)になるよう編集しました。この動画の1秒が実時間の5分に相当します。
 最初少し明るいのは薄明の影響で、後半明るくなっていくのは昇ってきた月の明かりの影響です。肉眼で感じる以上に写真では明るさの差が大きいですね。
 それにしても居座り続けた南西の雲のせいで天の川がわかりにくいですね (+_+)。こんなつもりではなかったんですけど…。そして彗星は雲の濃いところをギリギリ回避しながらも最後は厚い雲にダイビング~。なんとか及第点といったところでしょうか。


 次に中望遠レンズの撮影結果です。

SIGMA105mm+D810A / F2.0 ISO1600 15s トリミングなし

 最初にフルサイズ105mmのレンズで狙いました。なかなか雲のない状況が訪れず、この写真が最もマシなものです。尾の先にある雲がまぎらわしい (*´з`)。メインの尾と反対方向にも薄い光の筋が伸びています。これは14日にも写ったNLS(Neck Line Structure/首軸構造)でしょうか。
 今まで薄明の明るい空でしか撮影できませんでしたが、今回はたっぷり露出をかけられました。それゆえ背景に写る星の数も多いですし、宇宙を漂う彗星らしい姿が写せたのではないかなと思います。

SIGMA70-200mm+D810A /70mm F2.8 ISO1600 30s トリミングなし

 105mmレンズでは画角に対して彗星がなかなか窮屈でしたので、途中から70mmレンズに交換して撮影しました。
 しかし、雲は相変わらず消えてくれません。ひたすら連写しましたが時間が経過するとともに写野内の雲は増えていく始末。
 一番マシなのがレンズ交換後最初に撮ったこの写真です。尾は20度近くあることがわかりますね。細い線状に写っているのは人工衛星です。(最近、やたら多く写りこむで参ります。)

 というわけで、初めて暗い空でこの彗星を観察・撮影することができた遠征でした。
 20日の彗星の明るさはおよそ4等級と10月の13日14日(2等級前後?!)に比べると暗くなってはいますが、薄明終了後の見え方は素晴らしかったです。21日以降はさらに暗くなっていきますし、しばらくはスッキリした晴れ間が望めない天気予報ですので、もう見ることはないのかなぁと思います。9月の末から追いかけてきて最後まで雲には悩まされましたけれど、なにか他人とは思えない感覚が芽生えてしまいました(人じゃないですけどネ笑)。

 振り返って良い思い出になったとしみじみ思います。
 ありがとう!そして、さようなら~紫金山・アトラス彗星!!(おわり)

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