かんむり座物語

 春から夏に向かう季節、宵の空高くにかんむり座という星座が見つかります。どちらかと言えばマイナーな星座ですが、その形は可愛らしく印象的ですし、その神話は星座神話の中でもかなりドラマティックで魅力的です。今回はそんなかんむり座にスポットを当ててみます。

目次

かんむり座の見つけ方と特徴

かんむり座の見つけ方

 かんむり座は1等星アルクトゥルスを持つうしかい座の近くに位置します。見つけ方は次のようにするとわかりやすいでしょう。
①まず北斗七星を探します。
②北斗七星の柄の部分を曲げながら延ばして、オレンジ色のアルクトゥルスを確認します。
③次に夏の大三角で最も明るいこと座のベガを探します。
④アルクトゥルスからベガの方へ、5分の2ほど進んだあたりにある2等星アルフェッカを見つけます。
⑤アルフェッカの近くに半円形に並ぶ星が見つかれば、それがかんむり座です。

かんむり座のつなぎ方

 かんむり座を形作る星は2等星のアルフェッカと4等星4個、5等星2個の計7個です。暗い星が多いので街中の明るい空では見つけにくいでしょう。アルフェッカが見えれば、双眼鏡で半円形の星並びをたどることは可能です。視野が8°以上の低倍率広視野の双眼鏡なら、半円形がすっぽり入ります。星の良く見える場所なら肉眼でその形がわかります。星座の中では小さな方ですが、形は整っていてとても可愛らしく印象的です。双眼鏡で見るとそれぞれが宝石のように輝いてとても美しいながめです。

かんむり座の和名・星名

 半円形の整った形なので、日本各地で様々な名前が付けられていました。
 くるまぼし、たいこぼし、にじぼし、くびかざりぼし、ゆびわぼし、かごぼし、きんちゃくぼし、かまどぼし等、形からイメージされる名前が多いです。この中では個人的に「くびかざりぼし」が気に入っています。星のネックレスなんて素敵じゃないですか?!カップルで一緒に見つけてみてはいかがでしょうか。「君にプレゼントするよ」なんて台詞を言えば、「着けられるものがいいわ」と返されたりして…(笑)

かみなりさんのイメージ(C)いらすとや

 他にユニークな名をあげると、「かみなりさんのたいこぼし」。梅雨の時期、カミナリが激しく鳴ったあと、すっとおさまり空には星が見えてきたというシチュエーションを想像して下さい。そこに見つけたかんむり座の半円形が、カミナリさんの背中に背負っている太鼓に見えたのではないでしょうか?名付けた人、グッジョブですね!
 もう一つ、私が驚いた名前を…。それは「おにのおかま」。いや~想像して笑っちゃいました。でも、これは私の勘違いだったのです。漢字でかけば「鬼のお釜」。これだったら変な勘違いはなかったんですけどね。つまり、鬼が使うくらい大きな釜が空にあるということなんでしょうか。人の想像力ってホントおもしろいです。
 ちなみに2等星アルフェッカはアラビアで付けられた名前で、意味は「欠けたお皿」だそうです。アラビアでは半円形が欠けたお皿に見えたんですね。欠けたお皿は貧乏人の皿というイメージなのだそうです。アルフェッカには別名ゲンマというのがあって、こちらは宝石という意味です。こちらの方がかんむり座にはふさわしいと思います。

かんむり座の神話

 では最後にかんむり座の神話をご紹介しましょう。
 舞台はギリシャ、地中海に浮かぶクレタ島。島はミノス王が治めていました。ミノス王には美しい王妃パシパエがいましたが、ある時彼女は牛の頭に人間の身体をもつ怪物ミノタウロスを産みます。ミノタウロスは成長に従って凶暴になり人肉を好むようになりました。困り果てたミノスとパシパエは名工ダイダロスに決して脱出できない迷宮を作らせ、そこにミノタウロスを閉じ込めることにしました。そして、ミノス王は当時戦いに勝利し占領していたアテナイ国に対し毎年少年少女7人ずつをミノタウロスのいけにえとして差し出すように命令していたのでした。
 アテナイ王アイゲススはこのことに心を痛めていました。それを知った息子のテセウスは、自らそのいけにえになってミノタウロスを退治すると申し出ます。こうして、テセウスは他の少年少女と共にクレタ島に送り込まれミノス王と対面しましたが、その時ミノス王の娘アリアドネがなんとテセウスに一目ぼれ!どうにかして彼を助けたいと画策します。アリアドネは迷宮に送り込まれるテセウスにそっと近寄り、私を連れ出して結婚してくれると約束してくれるなら脱出する方法を教えますと伝えます(なかなかやりますね!)。もちろんテセウスは美しいアリアドネの提案を承諾しました。アリアドネはテセウスに糸玉を渡して、入口にこれを結びほどきながら迷宮を進むように言い、ミノタウロスを倒すための剣も与えました。(恋の力は偉大ですな。そしてテセウスとアリアドネが美男美女でないと成り立たないお話です。)
 アリアドネがドキドキして待っている中、テセウスは見事にミノタウロスを退治し戻ってきました!そして、約束通りテセウス一行はアリアドネを連れてクレタ島を脱出します。(やりましたね~見事な駈け落ち!テセウスとアリアドネは幸せいっぱい夢いっぱいでアテナイへ向かったのです。)

「テセウスに捨てられたアリアドネ」 A.カウフマン(1774年)

 途中、一行はナクソス島へ立ち寄りました。その夜の事、テセウスの夢に女神アテナが現れてこう言いました。「このままアリアドネを連れて帰ると不幸になる。アリアドネはここへ置いて立ち去るが良い」。目覚めたテセウスは神のお告げ通り、寝ているアリアドネだけを置いて仲間と共に船を出しました。
 目覚めたアリアドネは置き去りにされたのに気づきショックのあまり自殺をしようとします。(アリアドネ、一大決心して親も国も捨てたのにあまりに可哀そうですね。テセウスはヒドイ!でも神のお告げには逆らえなかったのでしょうか?!)

「バッカスとアリアドネ」 ピットーニ(1720年代)

 アリアドネが身を投げようとした時、酒の神ディオニュソスが優しくなぐさめ宝石がちりばめられた冠を贈りました。その後、二人は結婚して永く幸せに暮らしたと伝えられています。そしてアリアドネが亡くなった時、ディオニュソスは彼女の冠を天に上げ星座にしました。それがかんむり座です。半円形に輝く7つの星は、冠にちりばめられた宝石の輝きなのだということです。

 いかがでしたか?なかなかドラマティックなお話でしたね。それにしてもテセウスは最低な男で、ディオニュソスは良い神様という印象が強く残ってしまいます。けれど、ひょっとしたらアリアドネに一目ぼれをしたディオニュソスがアテナと共謀してテセウスをあきらめさせたという筋読みも成り立つかなと思ってしまいます。可能性ありますよね?いずれにせよディオニュソスは生涯彼女を愛したということなので、アリアドネはたぶん幸せだったし良かったのかもしれません。
 関連するお話として、ミノタウロス誕生のいきさつとか、テセウスの波乱万丈な人生もギリシャ神話では語られています。ご興味ある方は調べてみて下さい。では、今回はこのへんで失礼します。(おわり)

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