オリオンの恋

オリオン座の写真

 冬の星座と言えば、オリオン座。星座の王様とも称されるとても有名な星座です。1等星2つ、2等星5つからなる均整のとれたその姿は街の中からでも簡単に見つかるので、ご覧になった方も多いはず。子どもたちにも大人気の星座です。
 そんなオリオン座ですが、ギリシャ神話では凄腕の狩人で美男子の巨人、しかしかなり粗暴で危険な男として語られています。人間性に難あり?!なオリオンがかくも立派な星座になったのはなぜなのでしょう?
 それには彼の恋愛事情が深く関係しています。今回はそのあたりにスポットを当ててくわしく紹介することにしましょう。

 オリオンは海の神ポセイドンとクレタ島ミノス王の娘エウリュアレーとの間にできた子です。生まれながらにして海の上を大地と同じように歩けるという特殊な能力を持っていました。これは紛れもなくお父ちゃんの影響ですね!
 そして、狩りを得意とし背が高い美男子に成長したオリオンはやがてシーデーという美しい娘を妻としました。シーデーには高慢なところがありましたが、ある日、大神ゼウスの妻であるヘラよりも自分の方が美しいと公言してしまいます。激怒したヘラはシーデーを即、地獄(タルタロス)へ落とします。いやはやギリシャの神様は気が短い!特に生意気な人間には例外なく厳罰が与えられます。他にもこの手の話はギリシャ神話ではたくさんあるんです(怖っ)。当時の人々の考えが反映されていて道徳教育的な側面があったのかもしれませんね。
 さて妻を失ったオリオンはどのような気持ちだったのでしょうか。少なからず精神的なダメージを受けたに違いありません。傷心のオリオンは放浪の旅に出かけます。

ギリシャの地図 キオス島は東の端にあります

 オリオンがキオス島に立ち寄った時、島の王女メローペに一目ぼれをしました。オリオンは気に入ってもらおうと狩りの腕をいかし獲物を次々にプレゼントする作戦に出ます。そして機をみてプロポーズ!ところがメローペはオリオンのことがどうも好きにはなれませんでした。そこでお父ちゃんであるオイノピオン王に助けを求めます。一計を案じた王は、島を荒らしまわっている恐ろしい獅子を退治できたら結婚を許すことにしました。腹の中では絶対オリオンが獅子にやられるだろうと考えていたのです。恐ろしい計画ですね~。でも凄腕狩人のオリオンには朝飯前の仕事でした。いとも簡単にやっつけて退治した獅子の皮をドヤ顔で献上します。
 まさかの事態にオイノピオン王は困りました。早く結婚させろと迫るオリオンをしばらくの間、はぐらかし続けてしまいます。業を煮やしたオリオンはある夜、酒に酔った勢いで無理やりメローペを凌辱してしまいました。まあオリオンの気持ちもわかりますけど…メローペにすれば悲劇ですよね。腹を立てた王は、父である酒の神ディオニソスに頼んでオリオンを泥酔させ、何と両目を抉り取って彼を海岸に捨ててしまいます。(これはひどい!)

ニコラ・プッサン 『太陽を目指し走るオーリーオーン』(1658年)
※背中にいるのはゲーダリオン。それにしてもオリオン巨人過ぎる。

 視力を失ったオリオンが動けずにいると神のお告げが聞こえてきました。「東の国へ行け!太陽が海から昇る時、その光を受ければ目が見えるようになるだろう!」う~ん、どの神様のお告げだったのでしょうか?調べてもわからなかったのですが、お父ちゃんのポセイドンの計らいだったかもしれませんね。
 それはさておき、盲目のオリオンはとにかく動き始めました。すると槌の音が聞こえてきたので、それを頼りに行ってみるとそこは鍛冶の神ヘパイストスの鍛冶場でした。事情を知ったヘパイストスはオリオンを哀れに思い、弟子のゲーダリオンに道案内を命じました。こうしてオリオンは目的の地へ行くことができ、太陽神ヘリオスが光を当てたことによって視力を回復したのでした。(目が抉り取られているのに元通りになるってスゴイ!)

ファン・アントニオ・リベーラ『アウロラ』
(1819年)

 目が見えるようになったオリオンは、キオス島へ急ぎ引き返します。もちろんこんなひどい目にあわされた復讐のためです。「あの野郎!ぶっ殺してやる!」とすさまじい剣幕です。ここにオリオンの危険な性質が表れていますね。その噂を聞いたオイノピオン王は恐れおののき、しばらくの間、秘密の地下室に身を隠しました。オリオンは王の宮殿で大暴れをし、文字通り血まなこになって探しましたが見つかりませんでした。それもそのはず、鍛冶の神、名工ヘパイストスがオイノピオンのために急ぎ作った地下室なのでオリオンに見破られるはずもありません。(ヘパイストスってどっちの味方なんですかね?!)

 その後、クレタ島へ渡ったオリオンは曙の女神エオス(ローマ神話ではアウロラ)と恋に落ちます。実はオリオンが東の国へ行った時、エオスがオリオンを見て好きになり猛アタックしたのでした。オリオンは背が高く超イケメンだったからですね。エオスはオリオンに早く会いたいがために自分の仕事である夜明けの時間を短く切り上げてしまうほどだったそうです。
(女神エオス(アウロラ)の別の恋話はこちら「おおいぬ座・こいぬ座物語」をどうぞ)

エリュー・ヴェッダー 『プレイアデス』(1885年)

 一方、オリオンは、エオスといい仲になっているにもかかわらず、森の中で見つけたプレアデス7人姉妹を気に入ったようです。プレアデスはアトラス神の娘たちでいずれも美しく、歌ったり踊ったりするのを日課としていました。(現代なら○○○フォーティーエイトみたいな感じ?!)その様子をたまたまオリオンが目にして惚れたというわけです。ただし、普通に惚れたというよりはかなりしつこく追い回していたようで、プレアデスたちは恐怖に震えていました。これってストーカー規制法に完全にひっかかりますよね。これもオリオンの危険な性質と言えましょう。

アントン・ラファエル・メングス
『夜空にあるアルテミス』(1765年)

 ところで、夜明けの時間が最近妙に短くなったことに気づいた神様がいました。月と狩りの女神アルテミスです。不審に思ったアルテミスはエオスの宮殿がある東の国へ様子を見にやってきました。そして、そこでエオスと共にいたオリオンと運命的な出会いをします。アルテミスもまたオリオンを見染めてしまったのです。しかもお互い狩りが大好きで話が合うし、仲良くなるのに時間はかかりませんでした。徐々にアルテミスとの仲が深まっていきます。(エオスさんとはどうなったんだ?!)
 しかし、相変わらずプレアデスの追っかけはしつこくしていたようです。ある時、それを目にしたアルテミスは「これこれオリオン、そんな小娘を相手にしてはいけませんよ~ワタシというものがありながら~」と言ったかどうかはわかりませんが、「助けて~」と逃げ惑うプレアデスたちを鳩に変えて空に逃がしてやりました。やがて星になり、夜空の一角に集まって輝いているとのこと。それがおうし座の背にあるプレアデス星団(和名:すばる)です。(これってプレアデスたちを助けてやったとも思えますが、オリオンが夢中になっていた彼女たちを排除したともとれますね。個人的には後者ではないかと想像しております。)

アントン・ラファエル・メングス
『天にあるアポローン』(1765年頃)

 そんなことがありながらもオリオンとアルテミスのお付き合いは良い感じで続き、神々の中でも評判になるほどになっていました。これをおもしろく思わなかったのがアルテミスの兄アポロンです。「あんな乱暴な男のどこがいいんだ。今すぐ別れろ!そもそも処女神であるお前には恋が許されないのだ!」と激しく迫りますが、アルテミスは一向に言う事を聞きません。
 そこで、アポロンは恐ろしい計画を立てて実行します。まず大きな毒サソリを派遣してオリオンを海へ追い落とします。そして、遠く離れた場所から海を頭だけ出して歩くオリオンにまばゆい光を当て、アルテミスを挑発したのです。
「さすがに弓の名人であるおまえでも、遠くに光るあの的を射ることはできまい」と。アルテミスは「容易いことですわ」と言うがいなや、弓を一閃!そして見事に命中! アポロンはニヤリ!(怖っ)

ダニエル・シーター 『アルテミスと死せるオーリーオーン』(1685年)

 翌日、海岸にオリオンの死体が発見されてアルテミスが確認すると頭に自分の放った矢が刺さっているではありませんか!何という事でしょう!!だまされたとはいえ最愛のオリオンを自分の矢で殺めてしまうとは…アルテミスの驚きと悲しみはいかばかりだったでしょうか。ひどく落ち込んだアルテミスは夜空に月を出す仕事も忘れてしまうほどでした。
 これをあわれんだ大神ゼウスは、オリオンを立派な星座として月の通り道近くに置いてやりました。アルテミスは気を取り直し、夜空に月が戻りました。そして月に1度、オリオン座に月が近づく時、オリオンとアルテミスは束の間の逢瀬を楽しむことができるのでした。(めでたし、めでたし)

オリオンは星座になってもプレアデスを追いかけているように見える

 ここで終わりにすればロマンティックなままで済むのかもしれません。しかし星座の絵柄を見てみると、オリオンはアルテミスを待っているというよりは牛との戦いに夢中になっているようにも見えますし(気になる人はこちら「オリオンVSおうし」を見て下さい)、おうし座の背中のプレアデスを追いかけている(しつこい!元祖ストーカーやな!)ようにも見えます。これを見る限りオリオンはアルテミスにぞっこんとまでではないような気がするのですが、みなさんはいかがお感じでしょうか。

 以上、オリオンの恋愛模様を今回はご紹介しました。これによりオリオンの性質が明らかになったことで、オリオン座のイメージダウンにつながらないか、ちょっとだけ心配しています。オリオンファンの皆さま、ごめんなさい。m(_ _)m
(おわり)

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