星座神話の中でも特に有名なものの一つがこのペルセウスとアンドロメダの物語です。古代エチオピア王家物語と言われることもあります。ここには魅力的な登場人物や恐ろしい怪物,ハラハラドキドキする展開があり,映画インディージョーンズシリーズにも似たエンターテイメント性があります。多くのプラネタリウムでも紹介されますが,ボリュームがありすぎることとエロティック&バイオレンスな内容もあることから,オブラートに包みまくりで断片的にしかお話しされません。
というわけで,ここではプラネタリウムで話したくても話せなかった内容を含めてご紹介させていただきます。少々長くなりますこととR12指定(?)扱いということでご了解くださいませ。(変に期待しすぎないでネ)
では,はじまり,はじまり……
ギリシャのアルゴスという国にきわめて美しいダナエという王女がいました。父王アクリシオスは跡継ぎになる王子が生まれなかったので,神託(神のお告げを聞くこと)を求めると「王子は生まれないが男の子の孫が生まれ,汝はその孫に殺されるだろう」という恐ろしいものでした。アクリシオスはこれを恐れて,ダナエに子どもができないように青銅の塔に閉じ込め,男を近づけないようにしました。
ところが,この美しい王女に目を付けたのが大神ゼウスです。はい,また出ました!浮気癖の止まらない神様です。簡単に近づけないと悟ったゼウスはなんと黄金の雨に変身して青銅の塔に侵入!そのままダナエの身体にも侵入!(オイオイ)
その結果,ダナエは身ごもり男の子(名はペルセウス)が誕生します。
「なんでやねん!!」アクリシオスはこう叫んで絶句!そして真っ青!
乱心したアクリシオスは,ダナエとペルセウスを木箱に閉じ込め海へ流してしまいました。普通,こんなことされたら助かりません。でも,そこはゼウスの加護があったのか,無事にエーゲ海のセリポス島に漂着。島の漁師ディクティスによって助けられました。そして,ペルセウスはディクティスに世話になりながら,この島で立派な若者へと成長したのでした。
ところが,美しいダナエに心を奪われた島の王ポリュデクテスがワシのものになれ~とばかりにしつこくアプローチ。ポリュデクテスは母を守そうとするペルセウスが邪魔になります。ある時,ポリュデクテスは「怪物メデューサの首をワシに献上することができるか?おまえにはできまい!ふへへへ…」とペルセウスを挑発します。血気盛んなペルセウスは勢いで「やってみせるとも!」と言い放ちます。よこしまなポリュデクテスの計略にまんまとペルセウスははめられてしまうのでした。メデューサとは見るものを石に変えてしまうというゴルゴン3姉妹の末妹で,それを退治するのは至難の業です。
しかし,そこはゼウスの息子ペルセウス。ゼウスの指示を受けたヘルメス神やアテナ神の助けを借りて,空を飛べるサンダル,かぶると姿が見えなくなる兜,メデューサの首を切り取るための刀,鏡のような盾,首を入れる袋など必要な道具を揃え,メデューサ退治に出発します。西の果てメデューサのいる場所に到着したペルセウスは,女神アテナに手を引いてもらいながら後ろ向きに近づき,寝ているメデューサを鏡のような盾で映しながら見事に首を切り落とします。ズバッ!!するとどうでしょう!?飛び散った血の中から天馬ペガススが飛び出してきたのです。(なんでやねん!)
ここで少し横道にそれて,ペガススが誕生した経緯,アテナがなぜメデューサ退治に全面協力したかについて説明しておきましょう。
実は,メデューサは最初から怪物だったわけでなく,元々は美しい人間の女性だったのでした(ホ…ホンマカイナ~)。ただ,少し小悪魔的な美女だったようで,こともあろうに海の神ポセイドンを積極的に誘惑したのです。ポセイドンもそのセクシ~な誘惑にはまってしまい,何と女神アテナの神殿で情事に至ります(こらァ~!)。それを知ったアテナは激怒します。(そりゃそうですよね~)怒りはポセイドンでなくメデューサにフォーカス!「私の神聖な場所を汚しよってぇ!この小娘がっ!こうしてくれるわっ!!」と呪いをかけました。そうすると,何ということでしょう!(♪ビフォーアフター:美女→怪物)メデューサの自慢の美髪がおぞましい多数の毒蛇に,背中には黄金の翼が生え,恐ろしい顔の怪物に変えられてしまいます。これに抗議したメデューサの姉ステンノー,エウリアレーも同じような姿に変えられ,怪物コルゴン3姉妹が誕生したわけです。
というわけで,アテナがメデューサ退治に積極的だったのは,メデューサに恨みがあったからだということになります。女神さんを怒らせると怖いですね。ついでに申し上げると,メデューサが退治されたときに天馬ペガススが生まれたのは,要するにポセイドンとの子どもがこのタイミングで飛び出したということなんですね。ポセイドンは海の神であると同時に馬の神でもあったので,ウマでウマれてきたんです(さむ~)。 背中に翼があるのはメデューサも翼があるので,遺伝だと考えれば納得がいきます。
ハイ,ではお話を元に戻しましょう。
メデューサの断末魔が響き渡ると,姉のステンノー,エウリアレーが異変に気付いて近づいてきました。(えらいこっちゃ!)。ペルセウスは素早くメデューサの首を袋に入れ,姿が見えなくなる兜をかぶり,ペガススにまたがって逃げ去ります。ペルセウスの素早く冷静な動きと判断力はエクセレント!それにしてもペガススが出てくる時点でビックリなのに,それを帰りの乗り物にしてしまうとはペルセウスはやはり大物です。逆にペガススは親の仇を乗せてうまく操られているわけです。生まれたばかりでわからないとはいえ,ちょっと可哀そうな気もしますね。さて,ペルセウスの帰り道ですが,袋からこぼれたメデューサの血が海に落ちてサンゴが生まれ,陸に落ちて毒蛇やサソリを産んだと言われています。さらにアテナに献上されたメデューサの血が後に名医アスクレピオスに贈られ,死者を蘇らせる薬として用いられたとも伝えられています。恐るべしメデューサの血液!ですね。
ペルセウスが帰路を急いでいると,エチオピアの海岸で一人の美女が鎖につながれている姿を目にします。その美女とは,エチオピアの王女アンドロメダ。彼女がこのような目にあっているのには訳がありました。今度はその経緯をお話ししなければなりません。
アンドロメダの両親はエチオピアの王ケフェウスとその妃カシオペヤです。ある時,カシオペヤが自分と娘の美しさを自慢するあまり,当時もっとも美しいという噂の海のニンフたちも私たちの前ではかすんでしまうでしょうと言い放ちます。それを知った海のニンフたちが激怒!人間のくせに生意気!ということで海の神ポセイドンに言いつけます。ポセイドンの妻は海のニンフであるアンフィトリテ。妻を侮辱されたと感じたポセイドンはこれまた激怒!(もう激怒の嵐です。みんな気が短いんだから…)エチオピアの国に海の魔物(くじらの怪物)を差し向けて大暴れさせます。津波は起こすわ,人を食べるわ,大暴れ。オーマイガー!これでは国が滅んでしまうと思ったケフェウスは神様にお伺いをたてます。すると,お前の娘を海の魔物のいけにえに差し出せと神託がくだります。オーマイガー!仕方なくアンドロメダを海岸の岩に鎖で縛りつけたというわけです。まさに口は災いの元。しょうもない一言がとんでもないことになっちゃいました。アンドロメダはえらい災難です。彼女はどんな心境だったのでしょうか?
アンドロメダ「なんで張本人のお母さんでなくて私なの?(T_T)」
神様「そりゃ,おまえ~海の魔物もピチピチの方が喜ぶからじゃ~」(オイオイ)
ハイ,またまた話を戻してペルセウスがアンドロメダと出会ったシーン。
ペルセウス「これはいったい,どうしたのですか?」
アンドロメダ「かくかく,しかじかで…」
ペルセウス「なるほど,そうでしたか~ちょっと待っててくださいネ」
と言うとペルセウスは去っていきました。(おいおいすぐに助けなかったんか~い!)どこに行ったかと言いますと,ペルセウスはケフェウス王の元へ。
ペルセウス「魔物を倒し,姫を助けたあかつきには,ぜひわが妻にいただきたい」
ケフェウス「う~む,アンドロメダを助けられるなら背に腹は代えられぬ。承知した」
短時間で契約成立。ペルセウス,なかなかやりますな。
約束を取り付けたペルセウスは再びアンドロメダの元へ,そこには海の魔物がやってきていました。ペルセウスは最初,刀で戦いますが歯が立ちません。そこで,必殺メデューサの生首をどうだ!とばかりに見せつけると魔物は大きな岩になり海へずぶずぶ沈んでいきました。怪物が怪物の顔見てやられるとは…まさに毒を以て毒を制すというやつですな。これは美女が危機一髪の時にヒーローが必殺技で悪者をやっつけるというパターンの,ひょっとしたら元祖なのかもしれません。そして,ペルセウスはアンドロメダを鎖から解いてやります。この時点でアンドロメダは勇敢なペルセウスにメロメロになり,彼の胸に顔をうずめ抱きしめられ,彼からプロポーズされたのです。(たぶん)
さて,いよいよ2人が結婚するという時,事件が起こりました。アンドロメダの元婚約者フィネウスが手下を連れて乱入してきたのです。「アンドロメダと結婚するのはこのオレだ~,だって約束してたんだもん」というわけで,ペルセウスを亡き者にしようと襲いかかります。しかし,ペルセウスはひるみません。冷静に袋から必殺メデューサの生首を出して,彼らを石に変えてしまいました。(仕事がはやい!)
そして,ペルセウスはアンドロメダを引き連れて,ようやく故郷のセリポス島へ帰ってきました。するとそこでも事件が?!母ダナエに執着するポリュデクテス王が「ペルセウスは帰ってこん!あきらめてワシのものになるのじゃ,ぬははは…は」とまさに迫っていたのでした。(いやいや,ダナエさんよくぞそこまで操を守り通していましたね。立派です)そこにペルセウス登場!!「おまえのほしいものを持って帰ってきてやったぞ!これを見ろ!」と,またまた必殺メデューサの生首を見せつけていやらしい王とその手下を石に変えてしまうのでした。いやはや豪快でチョー気持ちいいですね。ペルセウスは世話になったディクティスを島の王にします。実はディクティスはポリュデクテス王の実の弟だったのです。兄弟でえらい違いだわ。
その後,ペルセウスは3人で母ダナエの故郷アルゴスへ向かいます。これを知ったペルセウスのおじいちゃんであるアクリシオス王は,「えらいこっちゃ!孫に殺される~」と国から逃亡したので,ペルセウスはアルゴス国の王になります。(そりゃあ,メデューサを退治したヒーローですから誰もが納得したでしょう。)
ところで,ペルセウスがおじいちゃんのアクリシオスを殺すという神託は,どうなったんでしょうか?これ,ちゃんと当たったんです。ある時,テッサリアの街ラリッサで行われた競技会で円盤投げに出場したペルセウスは,投げた円盤が観客席に飛び込み,老人に命中して死亡!それがアクリシオスだったというオチです。いわば不慮のというか運命の事故ですな。それにしてもおじいちゃん哀れです。(自分もおじいちゃんになったので,余計にそう感じます(*´Д`))
さて,その事故によってアルゴスに居にくくなったペルセウスはいろいろあって他の国を治めることになるのですが,アンドロメダとの間に6人の子どもをもうけます。その子孫にはヘラクレスやふたご座のカストル,ポルックスも出てきますので,ペルセウスはギリシャ神話上とても重要な英雄だということができましょう。
いかがだったでしょうか?ペルセウス・アンドロメダにまつわる大長編スペクタクル物語!よくぞここまでお付き合いいただきました。(これでもカットした話もあるんです…)m(_ _)m
ここから星座の話ですが,この神話の登場人物・怪物が秋の夜空にちりばめられて多数星座になっております。(画像参照)
ケフェウス座,カシオペヤ座,ペガスス座,鎖につながれた姿でアンドロメダ座,メデューサの首を持ったペルセウス座,海の魔物がくじら座。いやあ,お見事!ギリシャ人も粋な星座の作り方をしたものです。心から拍手を贈りたいと思います。
しか~し!どうしても納得いかないことが1点あります!
アンドロメダとペルセウスの星座絵を見てください。みなさんは何も思いませんか?
ペルセウスが鎖につながれたアンドロメダの足を剣でツンツンしているんですヨ。しかも,ペルセウスの目線が危険です。(こら~,どこ見とんねん!化けくじらが相手でしょ)
これって,何かのプレイですか?いったいどのようなお考えでこんな星座絵にしたのか,描いた人に聞いてみたいと私は激しく思うのです。
ついでに,近くで星座になっている父母の絵に注目すると,母カシオペヤは両手を上げて「きゃ~あなた!うちの娘に何しているの!」。父ケフェウスは両手を広げ「オーマイガー!」てな感じでしょうか?
もちろん,こんな話はプラネタリウムで子どもたち相手にはしておりません。(;^_^A
それで,私は考えました。そもそもペルセウスとアンドロメダを逆にすればええやん!!と。だいたい,ペガススのおへその星が美女アンドロメダの顔の星って(プラネ解説の定番),おかしいでしょ?!
それがペルセウスだったら違和感ございません。アンドロメダ座の星の並びは直線的で男性的だし,メデューサの首は肉眼で見えるアンドロメダ銀河にしてしまえば上手くハマります。一方,ペルセウス座は曲線的で女性的な星並び。これはアンドロメダにぴったりだし,すぐ下に海の魔物くじら座がいるので位置関係もバッチリ!(画像参照)そこにひっくり返ったペガススからペルセウスがメデューサの首を持って飛び降りてくるっていう位置関係は完璧じゃないですか!
なぜ,このようにしなかったんでしょうか?
あと2点,つまらないことですがお伝えしておきましょう。①ケフェウスの頭にとかげがかみついています。②海の魔物くじらの頭におひつじがチョコンと乗っています。海の魔物もなめられたもんですね。
…こう考えると,星座絵を描いた人も妄想をふくらまし,けっこう楽しんでいたのかもしれないですね。
長々とお付き合い,誠にありがとうございました。今回はこれくらいでおしまいにしておきます。