12月8日夜,冬の星座とレナード彗星の撮影を目的に和歌山県牟婁郡すさみ町へ遠征してきました。京都府南部の自宅から車で片道3時間半(高速道路経由)ほどの場所です。なかなか遠いので行くと決めるのは気合いがいります。しかし,その分すばらしい星空が期待できます。現地の天気は夜通し快晴の予報。もう行くしかありません。レナード彗星は明け方に昇りますし,月齢4の月は21時頃に沈みますし,あわてず交通量の少なくなる20時頃に出発しました。
撮影地は「日本童謡の園」というところです。舗装された駐車スペースがあり夜間使用できるトイレもあるので助かります。到着したのは23時20分頃でした。平日ということもあり先客は1組(男性と女性のペア)だけでした。聞くと和歌山市から明け方のレナード彗星を撮りに来たとおっしゃっていました。たった1人だけではないので心強かったです。
見上げるとオリオンをはじめ冬の星座がまばゆく輝いています。はるばる来てよかったと思えるほどの星空です。街灯もないのであたりは暗くて灯りがないと歩けません。それだけ空も暗いのですね。でも,目が慣れてくると空の明るさも感じてきて東の低空に少し光害があるのがわかりました。
方角をチェックした後,さっそくポータブル赤道儀で星座を撮影する準備に取りかかりました。同架するカメラは2台,Nikon D810AにSIGMA14mm F/1.8レンズとPanasonic Lumix S5にTTArtisan 21mm f/1.5レンズです。前者では冬の大六角を含む主要な冬の星座を,後者では冬の大三角とオリオンを中心に狙います。
まずはNikon D810Aの結果です。
レンズの絞りはF1.8→F2.8に,ISO感度は1600,露出は180sで26枚撮影しました。1枚ずつPhotoshopでレンズプロファイルを適用(周辺減光を補正等)してRAW現像し,ステライメージ9で加算平均コンポジットをした後の画像です。下に木の影が流れて映っています。
また,低いところは緑っぽくかぶっています。南は海のはずなのですが,何か光があるのでしょうか?1枚ずつ見ていると背景のムラが変化するので,目ではわからない程度のモヤがかかっていてそれが微弱な地上光を散乱していたのかもしれません。
先の画像の四隅及び中央の等倍500ピクセル四方を切り出したものを並べました。SIGMA14mmは開放F1.8と明るいのですが,四隅はかなり星像がいびつになります。今回はポータブル赤道儀でガイドしてじっくり光をためるので,少しでも良像になるようにF2.8に絞りました。
それでも,ご覧の通り四隅では星像が変形したりぼやけたりしています。拡大しなければ許せる程度ですが…。
以上の結果を踏まえて,トリミングして周辺の使えないところをカットし,色やコントラストの調整をしました。Nikon D810Aは赤い光(Hα)をとらえやすい仕様のカメラですので,オリオン座周辺のところどころに赤い散光星雲が写っています。
また,レンズの後端にはLeeNo.3のソフトフィルターを貼り付けているので,輝星がにじんで星の明るさや色がわかりやすくなっています。冬の主な星座とそこを横切る天の川が素晴らしい星空のおかげでほぼイメージ通りに仕上げることができました。
次にPanasonic Lumix S5のほうです。使用したレンズTTArtisan 21mm f/1.5は中国製のミラーレスカメラ用レンズです。絞りもピントも手動で合わせる方式ではありますが,21mm f/1.5というスペックで実売3万円強という価格が大変魅力的だったので,購入してしまいました。値段の割には,しっかりした作りで手に持ってもずっしりとした重量感があります。
このレンズにも星の明るさと色を出したいので,SIGMAのレンズと同じくLeeNo.3のソフトフィルターを貼り付けています。
レンズの絞りはF1.5→F2に,ISO感度は6400,露出は60sを35枚撮影しました。このレンズのプロファイルが残念ながらPhotoshopには登録されていませんので,周辺減光を補正することができません。それで,白いアクリル板をレンズ前に置いてフラット撮影し,それにより補正することにしました。ステライメージ9でダーク補正,フラット補正して加算平均コンポジットしたのが,この画像です。ただ,フラット撮影が暗すぎたのか,補正が上手くいかず四隅の明るさが変に明るくなっています。
この画像の四隅及び中央の等倍500ピクセル四方を切り出したものを並べました。これを見ると四隅は星像が三角に変形していますがそれほど激しくはありません。中心部は非常にシャープです。値段にすれば十分合格といえるのではないでしょうか。
以上の結果を踏まえて,トリミングして周辺の使えないところをカットして,色やコントラストの調整をしました。
Nikon D810Aのように散光星雲の赤がしっかりは出ません。しかし,星はスッキリシャープで透明感のある星空が描写できました。天の川の微光星も良い感じです。このレンズを使って初めての本格撮影でしたが,トリミング前提として星座の写真や流星群の写真に使えそうな手ごたえは感じました。
星座の撮影をしている間,レナード彗星撮影の準備をボチボチ行っていました。
赤道儀はタカハシのEM200改にPentax105SDHF+レデューサー(f=504mm)を積んでレナード彗星をアップで狙います。また180mmレンズで全体像も撮影する予定でいました。
まずは,Pentax105SDHFを積んでセッティングをします。機器を取付け,極軸やバランスを調整しアストロアーツ社ステラショット2(GearBox仕様)で制御します。この組み合わせは何度も経験しているのですが,ここでオートガイドが機能しないというトラブル発生!Wi-Fiでの接続を直接PCにケーブルで接続しても解消しない_(~_~;)。自動導入はできるのにオートガイドが機能しないのは,そのラインのどこかがおかしい?!ケーブルを抜き差ししたりPCを再起動したりいろいろ試しましたがダメ。
そのうちレナード彗星が昇ってきました。もうこれは,オートガイドなしで180mmレンズによる短時間露出撮影しかないと腹をくくり,F2.8開放,ISO感度2000,露出60sでひたすら撮りました。
薄明開始が5時20分くらいなので,彗星がある程度昇ってくる5時頃からが勝負です。幸い目立った雲に邪魔されることなく撮れました。
写真は5時6分から11分までの5コマ分を彗星基準でコンポジットしたものです。彗星を中心にトリミングしました。よく見るとたった5分の間でも背景の恒星が伸びて写っています。それだけ彗星の動きが速いということですね。
1枚1枚チェックすると恒星の像が少しいびつに写っているものが結構ありました。正確にガイドできていない証拠です。ガイドがちゃんとできていればもっと多くの枚数をコンポジットでき,もう少し美しい写真になっていたかもしれません。東に光害がなかったらもう少し尾が長く写ったかもしれません。レナード彗星に関しては少し悔しさが残ってしまいました。
とはいえ撮影の合間に満天の星も楽しめましたし,流れ星も見ましたし,充実感のある和歌山遠征でした。今度は透明度抜群の快晴の夜に機材万全の状態で再挑戦したいと思います。(終)