星撮り遠征記 2021.12.13/14 ー三重県南伊勢町ー

 2021年12月13日の夜,ふたご座流星群の撮影を目的に三重県度会郡南伊勢町まで行ってきました。伊勢志摩方面はこの時期の晴天率が高く,内陸より気温も高めなので観測には適しています。今年のふたご群の極大は14日の16時。したがって,13日夜と14日夜両方に多数の流れ星が期待できることになります。しかし,月が上弦を過ぎて満月に向かう時期なので,14日夜の方が月の入りが遅く月明かりの影響を長く受けてしまいます。それで13日夜に決めて出発することにしました。

鵜倉園地_見江島展望台

 目的地は,伊勢志摩国立公園の鵜倉園地,見江島展望台です。ここは南から西までほぼ海で見晴らしがよく星景写真の撮影スポットとして知られています。また,見下ろすとハート形をしている「からさぎ池」があることから「恋人の聖地」に認定されています。

奥に見える建物はトイレ

 それにちなんでハート形のモニュメントや恋人たちのためにハート形の南京錠「誓いの愛鍵」が付けられる場所もあってきれいに整備されています。夜間でも使用できるトイレも設置されていて長時間の撮影にも安心です。そして何より空が暗くて冬の天の川も楽に見えるのがうれしいところ。西側と北側に少し光害がありますが,それほど強くありません。

 さて,自宅を20時に出て途中でガソリンを入れたりして,現地に到着したのは23時頃でした。8台ほど停められる駐車場にはすでに2台が停まっていました。1台はエンジンがかかっていたので,月が沈むまで車中で待機していたのかもしれません。空を見上げると月明かりがあるものの冬の星座がとてもクリアに見えていいて期待が膨らみます。とりあえず初めてなので現場の確認に向かいました。展望台へ行くと,三脚に据えられたカメラが1台見えました。そしてその近くから話し声もかすかに聞こえてきました。恐る恐る「こんばんは」と声をかけると大学生かなと思える若い男女が「こんばんは」と明るく答えてくれました。聞くと何度もここへ星を見に来ているそうで流星の写真を撮りながら寝袋にくるまって流れ星を数えているとのこと。話をするのにわざわざ寝袋から2人とも起き上がってくれました。「お邪魔してしまいましたね」というと「いいえ,全然!」と,とても感じの良いカップルでこちらまで幸せな気分になりました。さすが「恋人の聖地」ですね。

撮影風景

 その後,カメラの設置位置を確認してから機材を運びました。1台のカメラ・三脚だけなら楽だったですが,持ってきたのは3台のカメラとポータブル赤道儀と三脚。それに背もたれが大きく倒れる大きなリクライニングチェア。さらに大型バッテリーやヒーター他の小物類,防寒具。車との間を3往復くらいしました。ここに来るなら運搬のことも考えて機材や荷物を厳選しないといけないなと思いました。

 さて,撮影結果です。まずはSIGMA14mm F1.8レンズを装着したNikon D810Aを三脚に固定し,海を入れた流星入り星景写真を狙いました。月が沈むころからひたすらシャッターを切り続けます。ISO感度6400,レンズの絞りはF2,露出時間は13秒に設定しました。

 月が沈んでまもなく午前2時4分,明るい流星が写野に入りました。その1枚がこちらです。月明かりの影響で西の方が明るく水平線上も良い感じの色合いになりました。

 続いて,2時半くらいの星座の位置に2時4分から3時46分までに捉えた流星を比較明合成した写真です。赤道儀で追いかけていないので,1個1個手作業で位置を合わせながら合成していきました。
 けっこうな手間でしたが,Twitterで紹介したところおかげさまでたくさんのイイねをいただきました。

 次に,4時40分くらいの星座の位置に4時5分から5時1分までに捉えた流星を比較明合成した写真です。
 先の写真の位置では冬の主要な星座がかなり西に傾いたので,カメラの向きをを変え横構図で狙っています。
 西に光害があるので,背景の明るさや色調整に苦労しました。やはり縦構図の写真の方が光害の影響が少ないので美しいですね。

流星の経路を逆にたどると放射点に行きつく

 今度は,TTartizan 21mm F1.5のレンズをPanasonic LUMIX S5に装着し,ポータブル赤道儀にのせて撮影した結果です。星名や星座線,放射点を入れて教育的な形に仕上げました(元科学館職員のサガ?でしょうか)。ISO感度12800,レンズの絞りはF2,露出は15秒に設定です。かなりトリミングしています。
 ふたご座近辺は期待していたより明るい流星が少なめで,少し見栄えにかけてしまいました。
 TTartizan 21mm F1.5のレンズは中心部付近のシャープさがなかなかいい感じです。かに座のプレセペ星団もしっかり解像しています。

カノープスの見つけ方

 最後は,安価な24mm F2.8レンズをCanon EOS 5DmkⅡにつけて撮った写真です。
 2時前にほぼ南中しているカノープスが明るい2等星並みにしかも黄色く見えていることに驚き,撮ることにしました。星好きな方はご存じですが,カノープスは南中しても低いため大気の減光を受け,本来全天2番目の明るい1等星にも関わらず相当暗く赤っぽく見えてしまう星です。中国の言い伝えでこれを見ると長生きできると言われています。
 当然,緯度が低いと高度は高くなります。北緯35度では南中高度が2.5度で,南伊勢では3.0度!わずかな違いですが,今までに見たことがないほど明るく見えました。当夜は大気の透明度も良かったのかもしれません。
 撮影データはISO感度6400,レンズの絞りは開放,露出時間は8秒の固定撮影,11枚分のコンポジットです。
 そこに星名や補助線を入れ,カノープスを見つける際に使えるファインディングチャートとしました。
(これも元科学館職員のサガ?!)

ハート形の金属部分がトイレなどの光で一部光っている

 EOSでのもう1枚は,せっかく恋人の聖地に来たということでハート形のモニュメントを入れて北を狙いました。よく考えてみるとハート形に流星が突き刺ささった場合,愛に亀裂が入りそうで縁起が悪いですね。幸いハートを避けるようにおとなしく流れてくれたので,良かったです。(笑)
 実は,このモニュメントを入れて撮影している人が3~4人いました。そうそう,月が沈むころから人が増えて駐車場は既定の枠に収まらないくらいになり,一時は全部で20人を超える人が集まりました。平日でこれですから,土日の条件の良い時だったらすごく混みそうです。

見江島展望台デッキから見る夜明け

 肝心の流星の方は月が沈んだ後,10分もながめれば10個は数えられるくらい良く飛んでいました。さっときて1時間ほど眺めて帰る方も多かったようですが,それでも十分満足されたと思います。
 薄明が近づくにつれて人も少なくなっていきました。私はだんだん空が明るくなるのを確認してから撮影をやめ,後片付けに取りかかりました。
 片づけが終わったころには東の水平線が赤く染まって美しいながめになっていました。海が見渡せるというのはいいものですね。美しい星空をじっくり眺めるにはとても良い場所だとあらためて思った次第です。
 みなさんも大切な人と見に行かれてはいかがでしょうか。(終)

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