はじめに
非常に明るく優秀なレンズであるSIGMA105mm F1.4。これまではNikonのD810Aに組み合わせて使っておりましたが、このたびCMOSカメラ(ASI533MCPro)につないで撮影をしてみたのでご報告したいと思います。
きっかけは最近はやりの電子観望に使用する望遠鏡を考えていた時に、このレンズはすごく適しているのではないか?!と思いついたことです。何せF1.4という明るさは電子観望でもまともな撮影でも短時間に高品質な画像が得られそうです。
レンズとカメラの接続
レンズとカメラの接続は、カメラと同時に購入したZWOマウントアダプターII(ASIカメラ全般用/ニコンFマウント用)を使います。このアダプターは中に48mmフィルターを1枚挿入することができます。レンズにはアルカスイス規格の三脚座が付いているので望遠鏡側にこれを固定するクランプを付ければ望遠鏡との接続はOKです。三脚座にはレンズを回転させる機構も付いていて使い勝手はとても良好です。
唯一の難点は一眼レフカメラに取付けた時のようにレンズの絞りが制御できないということですね。このレンズは接点に信号が入らない時は絞りが開放になる仕様なので、必然的に開放による撮影となります。
試写の結果
まずはSIGMA105mm+ASI533MCProを自動追尾経緯台であるAZ-GTiXに載せて試写をしてみました。同架しているFC50はアライメントや対象確認に使います。
さて試写の対象に選んだのははケフェウス座のIC1396散光星雲です。ガーネットスター付近にある人気の赤い星雲です。自宅からなのでマウントアダプター内に光害対策としてQuadBPフィルターを入れて撮影しました。
ASILiveというソフトでライブスタックを行いました。写真は-10℃ GAIN360 10s×40フレームの結果です。Photoshopで簡単に調整をしています。これの中心部と隅の部分を拡大して見ると変に星像が赤くにじんだように写っていることがわかります。105mmレンズとNikon D810Aの組合せでF1.4開放の写真を撮ったことがないので、絞り開放時の星像がどうなのかわかりません。でも、こんなに収差がひどくはないように思います。
それで、今度はQuadBPフィルターの影響ではないかとネットをいろいろ調べてみたところ、このような干渉フィルターは光の入射角が大きいと色ムラや像の劣化が起こるとありました。広角レンズの前面に使用するのは良くないという事は知っていましたが、望遠105mmレンズでは大丈夫と勝手に思っていました。しかし、それはレンズ前面での話で、レンズとカメラの間に入れるこのケースの場合はF値が2より小さいとき像に影響があるという記載がありました。なるほど、どうやらこれが原因のような気がします。
あとAZ-GTiX経緯台での撮影は電子観望なら良いのかもしれませんが、長時間では画面が回転していくので本格的な撮影には向かないこともわかりました。また、周辺減光も顕著なのでフラット補正は必要のようですね。
絞りの自作
試写の結果を受けて、改善するにはどうすればよいか考えました。レンズのフィルター径は105mmなので、ここに干渉フィルターを付けるのは現実的ではありません。レンズ前面に絞りを装着する方が簡単ですね。問題は絞りの直径ですが、F値を2以上にするために焦点距離が105mmなので、開口径をキリの良い50mmにすることにしました。これでF値は2.1になりますね。D810Aに付けて撮影する時もF2.2くらいにしているので問題ないでしょう。
さて、製作です。すでに手元にあった105mm-95mmのステップダウンリングにドーナツ状にカットしてた黒厚紙を両面テープで貼り付けます。黒厚紙、円切りカッター、両面テープは近所のダイソーで調達。いや~百均便利ですね。道具と材料さえあれば30分とかからず完成です。黒厚紙は厚さ0.5mmあるので結構しっかりしていて良い感じです。
ダーク&フラット撮影
冷却CMOSカメラは室内でも温度を指定してダークフレームの撮影ができるのが良いですね。一方フラットフレームの撮影も室内でipadを光源に行いました。全面50%グレー色で発光させたipad画面の上には拡散用に2mm厚の乳白色アクリル板を置いています。試写の時のピントを出した状態の機材を写真のようにセットして夜に撮影しました。
それぞれとりあえずSharpCapで30枚ずつ撮影しマスターフレームを取得しています。フラット撮影の方法も枚数もいろいろ他に試していないので、これで良いのかがわかっていません。これから試行錯誤していく必要がありそうです。
本格的に撮影
絞りもできたので晴れた夜に自宅から撮影しました。今度は自宅天文台に据え付けのタカハシNJP赤道儀に同架しての撮影です。これくらいの焦点距離なら精度の良い赤道儀のノータッチガイドで大丈夫そうです。
撮影しはじめた画像をモニタで拡大してみると星像は改善しているようでホッとしました。とりあえず秋から冬にかけての主な天体をあまり時間をかけずに次々と撮っていきました。撮像はSharpCapで-10℃ GAIN101 OFFSET10 1フレーム120~180s 総露出時間は対象等により16分~120分です。ダーク&フラットの前処理もしました。画像はステライメージ9でコンポジットし、Photoshopで簡単に調整しています。
以下、撮影した画像を列挙します。画像処理のスキルが今一つなので円形マスクをかけてごまかしてます(^_^;)。視野円は共通で約5.5度なので双眼鏡の視野くらいですね。
おわりに
今回ようやくSIGMA105mmレンズとCMOSカメラを接続して天体を撮影することができました。F2.1と明るいので光害が少ない場所でもっと時間をかければ写真の質を上げられそうな気がします。また、2倍テレプラスを装着してみるとどうなるか興味があります。焦点距離210mm、F2.8になるので自作絞りを付けずに済みますし、天体をもう少し大きく写せます。一般的な望遠鏡に比べるとこれでも十分に明るいですしね。問題は星像劣化が許容できるかどうかですが、う~んこればかりはやってみないとわからないか~。悩みどころです。