星撮り遠征記2023.12.13/14 -三重県 南伊勢町- ふたご座流星群

目次

はじめに

 今年2023年のふたご座流星群は月あかりの影響もなく、極大の時刻も15日午前4時と放射点が高い場所にあるので、かなりの好条件だと言われていました。しかし、何という事でしょう!天気予報によると極大夜は広い範囲で雨•くもり!期待できるのは極大の前日つまり13日の夜くらいじゃあないですか?!まあ天気ばかりは仕方ありませんね。…というわけで、13日の夜に写真を撮りに行くことにしました。場所は昨年と同じ三重県度会郡南伊勢町の鵜倉園地(詳細はこちら)。自宅からだと車では休憩含めて3時間弱で着きます。今年も星仲間のTさんと一緒に向かいました。

撮影地

鵜倉園地 かさらぎ展望台から東方向
鵜倉園地 かさらぎ展望台から南西方向

 現地に着いたのは午後4時半過ぎ。すでに4台くらいの車が停まっていて、観測場所には見覚えのあるナイスなシニアの方が機材をセッティングされていました。こんにちは〜とご挨拶。お互いに「確か昨年のふたごの時もお会いしましたねぇ」という感じで何だかほっこりしました。鳥のフンのついたベンチも掃除されたそうで、私たちはそこに荷物を置いて気持ち良く使わせていただきました。ありがとうございました。この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。
 さて、軽く会話の後、さっそく撮影準備をしました。まずは三脚にカメラをセットするのですが、海を見下ろす眺望に加えてピンクやオレンジに色づく夕空の美しいこと!しばらく手を止めて見入ってしまうほどでした。そしてこの空の美しさは透明感のある満天の星につながっていくことを予感させます。そこにたくさんの流星が飛ぶであろうことも!期待がふくらんでワクワクしながら作業をしたのでした。

カメラとレンズ

比較するとLumix S5+SIGMA20mmの方がボディもレンズも軽い

 私が用意したカメラは2台。SIGMA20mmF1.4を装着したPanasonicのLumix S5とSIGMA14mmF1.8を装着したNikon D810Aです。どちらもふたご座が高く昇るまでは三脚に固定して景色とともに撮影し、その後ポータブル赤道儀に同架してガイド撮影する計画です。
 SIGMA20mmF1.4は11月末のブラックフライデー気運に踊らされて、ついポチってしまったレンズです。これは昨年秋に星景写真用と銘打って発売されたもので、天文用途にうれしい機能を有しています。12月上旬に試写した結果、6秒露出までは固定撮影で星像がほぼ点に写ることを確認しました。しかもF1.4開放でも写野の端まで星像がほぼ点でビックリです。流星写真にはうってつけのレンズと言えましょう。今回が初の本格的な撮影になります。
 なお、星座の形が分かりやすくなるように両レンズともリアにLeeのソフトフィルターNo.3を装着しています。

固定撮影

 ふたご座が高く昇ってくるまで、カメラは東に向けて景色とともに冬の星座を三脚に固定して撮影しました。東の方向は少し街灯りがあって、灯台の光も明滅して見えます。さらに今年は漁船のオレンジ色の灯りがたくさん海上に見られました。Tさん曰くおそらくイカ釣り漁船かなぁと…。新月に近く月明かりが海に差し込まない時の方が好まれるようです。星の観測とかぶるじゃん!(笑)

 まずは14mm+D810Aの結果から

F2 ISO3200 13秒露出

 20:12~20:47の間に飛んだ4個の流星(うち群流星は1個)を20:19の星空背景に合成したものです。星空背景はSequatorというソフトで20枚をコンポジットしました。暗くなった19時前から撮影はしていましたが20時過ぎまで眼視では一切流れ星は見られず、写真にも写っていませんでした。昨年の極大夜ではこんな時間帯でも結構飛んでいた印象があったので、極大ずれるとだいぶ少ないなあと感じた次第です。

F2 ISO3200 13秒露出

 21:11~22:13の間に飛んだ5個の流星(うち群流星は3個)を22:05の星空背景に合成したものです。少し群流星が飛び始めました。
 ふたご群ではありませんが、地平線付近に緑色の火球(22h05m頃に出現)が写っています。残念ながら見逃してしまいました。くやしい~何をしていたんだろ?

 次に20mm+Lumix S5の結果です。

F1.4 ISO4000 6秒露出

 20:12~22:13の間に飛んだ6個の流星(うち群流星は5個)を21:35の星空背景に合成したものです。レンズが明るいこともあって同じ流星もD810Aより明るく写っていますね。

ガイド撮影

 ふたご座が十分高くに昇ってきた22時過ぎ、三脚から2台ともカメラを降ろしてポータブル赤道儀へと移動させました。基本的に固定撮影とシャッタースピードは変えずひたすら連写です。赤道儀で星を追いかけることで流星の合成は非常に楽になります。
 最初は順調でしたが、真夜中0時あたりから雲が空を覆い始め、3時頃まで星がほとんど見えない時間帯がありました。3時以降も雲が出たり引っ込んだりの中での撮影でした。

 まずは14mm+D810Aの結果から

F2 ISO6400 13秒露出

 22:58~23:28の間に飛んだ6個の流星(うち群流星は5個)を星空背景に合成したものです。
星空背景は20コマ分をステライメージ9でコンポジットしました。明るく大きく写っているのは木星です。14mmの写野は周辺が大きくゆがみます。目立った星座が端に来ると少し違和感を覚えてしまいます。また、四隅を拡大して見ると鳥が羽を広げたように星が写っているのがわかります。レンズの収差ですね。まあ、拡大しなければ気になりません。(笑)

F2 ISO6400 13秒露出

 23:32~0:33の間に飛んだ8個の流星(うち群流星は6個)を星空背景に合成したものです。星空背景は雲のない時間帯の20コマをコンポジットしています。冬の大六角や天の川がほぼ中央に来ています。

F2 ISO6400 13秒露出

 02:28~04:02の間に飛んだ23個の流星(うち群流星は16個)を星空背景に合成したものです。静止流星に近いものが2個写っています(縮小しているのでわかりにくいですスミマセン)。星空背景は雲の出ていない20コマをコンポジットしています。この時間帯は放射点も高く活発に流星が飛んだはずですが、けっこう雲に邪魔されたので残念でした。

F2 ISO6400 13秒露出

 04:07~05:14の間に飛んだ12個の流星(うち群流星は7個)を星空背景に合成したものです。この時間帯もほぼ雲が流れて写野にあるといった感じで邪魔を受けました。なので星空背景は雲のない部分を切り貼りしてつなげています。(笑)

 次に20mm+Lumix S5の結果です。

F1.4 ISO4000 6秒露出

 22:12~22:37の間に飛んだ4個の流星(すべて群流星)を星空背景に合成したものです。
 星空背景は20コマ分をステライメージ9でコンポジットしました。明るく大きく写っているのは木星です。14mmに比べて周辺の歪みは少ないもののオリオン座の下に見えるうさぎ座などはえらく引き延ばされております(笑)。おもしろいのはおうし座の眼にあたる1等星アルデバランを見事に流星が射抜いていますね。弓矢を携えたカストルの一撃でしょうか?!

F1.4 ISO4000 6秒露出

 23:32~00:44の間に飛んだ5個の流星(うち群流星は2個)を星空背景に合成したものです。
 星空背景は20コマ分をステライメージ9でコンポジットしました。メジャーな冬の星座が縦構図で収まり、天の川も写っています。カメラは外部給電していたのですが、純正ではないケーブルをつないでいたからか知らないうちにバッテリー切れで停止していました。オーマイガー!でも雲の多い時間帯だったのでちょうど良かったです。

F1.4 ISO4000 6秒露出

 02:23~04:01の間に飛んだ12個の流星(うち群流星は8個)を星空背景に合成したものです。
星空背景は20コマ分をステライメージ9でコンポジットしました。D810Aのところでも書いたように雲の邪魔が入ったのが残念でした。

F1.4 ISO4000 6秒露出  右下の黒っぽい部分は雲

 04:05~05:25の間に飛んだ10個の流星(うち群流星は6個)を星空背景に合成したものです。
 星空背景は20コマ分をステライメージ9でコンポジットしました。この時間帯も雲が良く流れてきてまともに雲が無くなったことはありませんでした。それで星空背景の右下には雲が写っています。そして人工衛星がやたら写るので流星が写ったコマの選別に苦労しました(^_^;)。

 最後に雲越しに飛んだ明るい流星(いずれもふたご座群群流星ではない)を紹介します。

2023.12.14 02h28m頃 出現の散在流星
2023.12.14 02h40m頃 出現の散在流星

 雲と流星を分離できなかったので、他の流星と一緒に合成できませんでした。必然的に単コマショットとなります。雲が無ければ色も明るさも素敵な流星ショットになったかと思うと少々残念です。
 画像処理はPhotoshopのRAW現像でレンズプロファイルを適用して周辺減光を補正し、AIノイズ除去を施しました。あとはレベル補正、色調整をおこなっています。20mmF1.4開放、ISO4000、6秒露出ですがまずまずノイズが目立たない見られる画像になっていると思います。

カメラとレンズの印象

 新しく使ったSIGMA20mmF1.4レンズは素晴らしく威力を発揮してくれました。絞り開放から使えて星像も素晴らしいことが確認できました。SIGMA14mmF1.8(→F2で使用)に比べると同じ流星でも明るく写ってくれました。短所としてはF値が明るい分ピントがシビアで正確に合わすのが難しいことでしょうか。Lumix S5はモニタ上で20倍に拡大できるのですが、それでもどこでピントが合っているのか判別が困難でした。望遠鏡で一般的なバーティノフマスクも役に立たないので困ります。最近発売されたケンコーのNIGHT FOCUSが有効かもしれないなと考えています。
 あと別の場所の試写でF1.4 ISO4000 6秒露出が適正かと思っていたのですが、写真を見ると南伊勢の暗い空ではISO6400程度まで感度を上げてもいけそうな感じです。こうなるとさらに多くの流星を捕らえられそうなので、次の機会が楽しみになってきました。
 一方、SIGMA14mm+D810Aの組合せですが、周辺が大きく歪むものの広い画角は魅力的です。それにD810Aの発色が非常に美しいと思います。赤い星雲が写りやすい天体用カメラですが、ホワイトバランスがオートで星空の色がちょうどよく、星の色も濃く豊かです。Lumix S5の発色と比べるとそれが良くわかります。さすが天体撮影専用機といったところでしょうか。でも13秒露出でひたすら連写していったので、なんだか可哀そうになってきました。機械的なシャッターがカシャカシャ言うたびに酷使しているなぁと思うのです。NikonさんもZマウントのミラーレスバージョンを出してくれたらいいんですけどね。

おわりに

 今回は多くの流星が流れると期待された真夜中~明け方の時間帯に雲が出たというのが残念でした。それでも雲間からそこそこ流星を見ることができたので良しとしなければならないでしょう。近畿中部でも雲や霧が出たと聞いているので、南伊勢はまだマシだったかもしれません。
 また極大前日という事もあり、ここ数年の極大夜の状況と比べるとやはり出現はおとなしかった印象です。明るい流星の割合も少ないように感じました。それでも冬の天の川が見える美しい星空は満喫できましたし、全部で50~60個の流れ星は数えられて良かったです。遠征した甲斐がありました。
 来年2024年のふたご座流星群は満月に近い月があるので条件が悪いですが、8月のペルセウス座流星群は真夜中頃に月が沈むのでまずまず期待できる条件です。何度見ても飽きない流星群!また星のきれいなところで楽しみたいと思います。

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