星撮り遠征記 2024.3.10 -京都府 丹後町-

目次

はじめに

 2024年3月に入るとX(旧Twitter)ではポン・ブルックス彗星(12P)の写真が数多く投稿されていました。望遠鏡で撮られた写真では緑色のコマとそこから伸びるイオンテールが彗星らしい姿を見せてくれています。自分としても撮影したいという気持ちが高まってきましたが思うように晴れてくれません。そこでGPV気象予報で調べてみると3月10日が晴れそうだと判明。しかも、その日はアンドロメダ銀河に近づくタイミングではないですか!これは是非ともその様子を写真に収めたいと思い立った次第です。さっそく、星仲間のTさんに連絡を取り、一緒に行くことになりました。

撮影場所

 ポン・ブルックス彗星は日没後、北西の低空に見られます。薄明終了後の高度が10数度なので、北西の視界が開けた場所でないといけません。しかも彗星の尾は淡いため、しっかり写すには街灯りのできるだけ少ない場所が条件になります。これらの条件を満たす場所として考えたのが、京都府の北、日本海に面した丹後半島です。北西に水平線が見れる場所なら文句なし、空の暗さも合格点のはず!Googleマップで調べるとそのようなポイントはいくつか見つかりました。今回はその中から大成古墳群展望台の駐車場を選定!初めて行く場所ではありますが、車が通る道から少し外れた場所なので比較的落ち着いて撮影ができそうだと考えました。

大成古墳群無料駐車場の位置(GoogleMapより)

撮影地の様子

 当日、京都市内でTさんと合流、京都縦貫道に乗って北へ向かいました。現地には17時半頃に到着。天気は快晴!日曜日の夕方とあってか誰もいません。予想はしていたものの気温は0度近くで風もそこそこあって(風速3mくらい?)寒いです。海に面しているのでやはり風当たりは強いですね。夕日を見送りつつ、機材を組み立てていきました。

現地に到着した車(2人分の荷物満載)
現地から見た西の方角

SIGMA105mmでの撮影

 アンドロメダ銀河と彗星を写真に収めるべく、SIGMA105mmF1.4+Nikon D810Aをビクセン旧型SPガイドパック(ポータブル赤道儀/片持ちフォーク式に改造)に載せて狙います。今年に入って入手したカーボン三脚を使うと高い位置に赤道儀を持ってこれるので、極軸合わせやカメラの構図合わせがラクチン!この赤道儀とレンズの組合せでは1分露出までなら十分点像で写ってくれる実績があります。
 今回は当日の試写の結果を見て、F2、ISO1250、30秒の露出で撮ることに決定。薄明の終わった19h36mから20枚連写しました。総露出は10分間ということになります。

左の三脚はガイドパック専用のもの

 その結果がこちら。PhotoshopでRAW現像(レンズ補正、AIノイズ除去も実施)してTiffファイルに変換した後、ステライメージ9で20枚コンポジット(ダーク、フラット補正はなし)。加算平均(σクリッピング)でのコンポジットなので人工衛星などの軌跡は排除されます。その後、再びPhotoshopでトーンカーブ補正、トリミング(180mm相当)などして仕上げました。一応、今回の遠征の最も撮りたかった構図です。淡い部分をグリグリ持ち上げて強調するスキルはありませんので、こんな感じになりました。(^_^;)

2024.3.10 19h36m~46m
アンドロメダ銀河とポン・ブルックス彗星 

 1コマ1コマ見ていくと何と!2コマ目に流星が写っているではありませんか!ワタシは見ていなかったのであります。残念!
 しかし、F2のISO1250でこの写り!結構明るい流星だったと思われます。ISO感度を3200くらいにしておけばもっと派手に写ってくれたのにと悔やんでも後の祭りです。105mmレンズの画角に流星が飛び込むなんて思ってもいませんでしたからね。アンドロメダ銀河&彗星を狙ったショットに流星が入るだけでも幸運だ!と考えることにしました。
 写真は流星を含む前後3コマを加算平均(σクリッピング)コンポジットしたものに流星近辺部分を比較明合成して仕上げています。およそ135mm相当のトリミングです。

流星は19h36m頃に出現

 流星が写った次のコマからは流星痕が記録されていました。流星痕とは流星が通った後に軌跡に沿って残る薄く輝く痕跡のことで、流星物質がプラズマ化したものや大気中の原子分子が光ります。そして上空の大気の流れにより形が変わっていきますが、その様子が最後のコマまで(9分以上)記録されておりました。考えてみると撮り始めて2コマ目に流星が入り、その後18コマに流星痕の変化の様子が記録されていたというまさに奇跡!
 せっかくなので、その部分を切り出して60倍速のGIFアニメにしてみました。
 これぞれのコマを見ると人工衛星の奇跡が白い線としてたくさん記録されています。ホンマに多い (~_~;)

出現した流星と流星痕の変化
(画像クリックで再生/最初のコマだけ5秒表示)

PENTAX105SDHFでの撮影、出来ず

 105mmレンズの連写を始めてから、彗星のアップを撮るべく、PENTAX105SDHF+レデューサ(f=504mm)+Panasonic Lumix S5をタカハシEM200赤道儀に載せての撮影にかかりました。
 しかし、ここで予期せぬトラブルが続出!まず、カメラがエラーを起こして一切の操作ができません。時間的に焦っていたこともあり頭はパニック状態!ならば先に赤道儀の制御をパソコンからできるように準備を と命令を出すも高速導入ができない!?ガイド鏡のキャリブレーションも不良!そのうちポータブル電源がプツンと落ちる!なんじゃ、こりゃ~!そうしているうちに彗星の高度は低くなってますます焦る!手袋せずに作業をしていたので手がかじかんで動かなくなる!
 一人ぼっちの観測だったらメンタルがやられそうなところですが、Tさんと会話しながら冷静さを取り戻し対策を考えました。カメラは105mmに付けていたNikonを使おう、そして電源は予備に持ってきた自動車用バッテリーに交換して、手袋等防寒もしっかりした上でやり直すことにしました。もう、彗星は撮れなくてもバラ星雲などを撮ればいいという気持ちで着実に作業を進め、ようやく20時過ぎに準備完了~。さあこれからシャッターを切ろうと空を見上げると…まさかの雲が?!なんてこった!!(ショックのあまり写真無しです)
 一方、同行したTさんも持ってきたパソコンが起動せず自動ガイドができないため、屈折鏡筒の直焦点撮影を断念されていました。なんてこった!! 冷えた体を温めるため、Tさんにお湯を沸かしてもらってコーヒーブレイクし少し落ち着きましたが、空の方は一向に晴れる気配がありません。(T_T)
 仕方がないので22時半頃に撤収を決意し、機材を車に積み込むのでした。無念~(´Д`)

帰り際の星景写真

 あきらめて片づけると晴れてくる~♪って天文あるあるですよね。今回もまさにそのパターン! 沈もうとする冬の星座あたりを狙い、車に載せた20mm広角レンズと三脚を引っ張り出してパシャリ。なんと、Lumix S5が復活していたのですよ。ホントにもう~(苦笑)


 さて、この写真を見ると海面上にはかなりモヤがあることがわかりますね。近くの港の灯りや水平線上にはイカ釣り漁船(でしょうか?)の灯りがポツポツと見受けられます。海に面しているからといって真っ暗ではないことを思い知らされます。

2024.3.10 23h02m
SIGMA20mmF1.4+LumixS5/F2 ISO5000 6秒

おわりに

 今回、こんなにトラブルが立て続けに起こることは思いませんでした。ひょっとしたら、古墳に挨拶もことわりもせず撮影していたからかもしれないなと今さらになって思いました。日本人たるもの常に礼節をわきまえておかねばなりませんね。
 また、PENTAX鏡筒による撮影は久しぶりだったこともあり、かなり慌てました。時間的に余裕のない撮影では事前の十分な練習・確認が大切だということを再認識した次第です。まあこれも経験、今後に生かしたいと思います。
 でも彗星の拡大撮影はできなかったものの、105mmレンズの撮影ではアンドロメダ銀河&彗星に流星&流星痕が絶妙のタイミングで飛び込むというサプライズ!があったので、行った価値のある遠征だということにしておきます。(おわり)

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