今年2022年近畿地方の梅雨明けは、観測史上最も早く6月28日と発表されました。梅雨の期間は過去最短の14日間!暑さと水不足が心配ですが、天文屋としてはうれしい限り。GPV気象予報を調べると29日の夜は安定して晴れそうだったので、奈良県御杖村のみつえ高原牧場へ遠征してきました。
今回は本来なら5月くらいまでに狙うべきさそり座いて座付近を中心に天の川とそこに点在する散光星雲をターゲットとしました。カメラレンズはSIGMA105mm+Nikon D810AとTTartizan21mm+Lumix S5、赤道儀はEM200とポータブル赤道儀です。
みつえ高原牧場は南方向が十分暗くて低いところまで見渡せるので、天体写真を撮影する人が多く訪れる人気スポットです。家を18時に出発して、現地には20時前に到着しました。すでに2人が来られていて機材をセットされていました。後から2人が来られまして、平日といえどもさすが新月の快晴夜なので、熱心な人が集まるわけですね。
私は屋根とベンチのあるフリースペース近くに機材を運びセッティングをしました。
まずは片持ちフォーク仕様に改造した古いポータブル赤道儀(くわしく紹介した記事はこちら)にSIGMA105mm(ファーストライトのようすはこちら)を載せてガイドが成功するかのテストです。
とりあえずさそり座の頭を狙ってISO1000、F2.2、60秒露出で16枚で撮影しました。その結果がこの写真です。四角くトリミングをしていますが、ガイドは無事成功していました!良かった!これからはこの機材の組合せで運用できそうです。
さて、せっかくですので同じ写真のアンタレス付近をトリミングして色を強調してみました。カラフルタウンとニックネームを持つ領域は写真だからできる美しい表現ですね。実際に双眼鏡などでこんなに見えたら天文ファンが激増するに違いありません。(笑)
ポータブル赤道儀でのガイドが成功しているかの詳しい判定はその場で出来ませんでしたので、それ以降は安全なEM200に105mmを載せ替えて写真を撮っていきました。
次に狙ったのは、さそり座の尻尾の領域です。ここは天の川の中にあって赤い散光星雲や散開星団があちこちに点在しています。しかし、南中高度が10~20度くらいと低いので、南が開けていて光害が少なくすっきり晴れていないときれいに撮れません。
続いては、少し北に上がっていて座北西部を中心とした濃い天の川の領域です。ここにも赤い散光星雲が点在し、無数の星が雲のように入り組んでいます。まるで芸術作品のようです。望遠鏡で散策すると、天の川のたくさんの星が視野に広がり、あちこちに星のかたまり(散開星団)が認められて素晴らしい眺めです。
今度は、はくちょう座の一部です。画面左上の赤い散光星雲は有名な北アメリカ星雲。画面右の中央よりははくちょう座γ星サドル周辺に広がる赤い散光星雲。そして画面左下の薄く弧を描くような星雲は数万年前に重い星が超新星爆発を起こして飛び散った残骸で網状星雲といいます。
一方、TTartizan21mm+Lumix S5をポータブル赤道儀に載せて広い範囲を撮影しました。このレンズはF1.5と明るいのですがF2.8に絞っても最周辺の星は線状に伸びて写りますので、トリミング前提で撮ることにしています。Lumix S5はD810Aのようには赤い星雲があまり写りませんが、バリアングル液晶をはじめ星野写真撮影にも使いやすい機能を持っています。ただ、D810Aに比べ、実効感度が少し低いようです。
広角レンズの1枚目は、いて座さそり座と天の川です。ここは天の川銀河の中心部にあたるので、天の川が太く濃くなっています。下の方が黄色っぽくなっているのは高度が低いので、大気の影響を強く受けているためです。沈む夕日が赤っぽく暗くなるのと同じですね。いっそのこと地面の風景を入れた写真にした方が雰囲気が出たかもしれません。
2枚目は、夏の大三角です。東から見上げた角度で撮影しました。いて座さそり座もそうですが、広い範囲を撮ると背景の色合いなどがなかなか均一になりません。色彩豊かに仕上げようとするとそこがネックになります。落としどころが難しいです。まあ、そこは撮影者(編集者)の
こだわりですかね。これが正解!っていうのはないのだと思います。
というわけで、奈良県御杖村遠征の成果を紹介させていただきました。比較的気軽に行ける観測地の中では条件の良い場所だなあとあらためて思いました。また撮影に行ってみようと思います。(おわり)